健康志向の高まりとプライベートブランドの進化
消費者の健康志向が強まる中、タンパク質への需要は特に高まっている。
ベイン・アンド・カンパニーの調査では、米国消費者の44%が「タンパク質をより多く摂取したい」と回答し、英国・ポーランド・スペインでもその割合が約3割を占めている。
このような消費者ニーズに対応し、リージョナルチェーンやハードディスカウントストア (HDS) でも、高タンパク質商品のPB開発が広がっている。
たとえば、米中西部のリージョナルチェーンのマイヤー (Meijer) は、セサミプロテインパスタサラダ、プロテインパフスナックなど、1食あたりのタンパク質含有量が10g以上のPB商品を700品目超取り扱っている。
また、ドイツ発のHDSアルディ (ALDI) は、SNSでのトレンドを踏まえ、2026年1月に英国で「プロテインボール」を発売した。69ペンス (約148円:1ペンス=2.15円で換算) という圧倒的な低価格が強みだ。このほか、アイスクリームやプロテインバー、カップ麺など、幅広いカテゴリーで、高タンパク質のPB商品を展開している。
欧米では、インスリンの分泌を促進して血糖値を下げるGLP-1受容体作用薬が2型糖尿病や肥満症の治療薬として急速に普及し、その使用者向けのPB商品も開発されている。
英マークス&スペンサー (Marks & Spencer) はGLP-1受容体作用薬使用者に向けた新ライン「Nutrient Dense (ニュートリエント・デンス)」を立ち上げ、食物繊維やビタミン、ミネラルを豊富に含むサラダ、スナック、即食など20品目を展開している。
また、英コープ (Co-operative Group) も2026年1月、即食PB「Good Fuel (グッド・フューエル)」で、パスタやチキンカレー、グレインボウルなど、GLP-1受容体作用薬使用者向けの新メニューを投入した。
米食品スーパー (SM) のクローガー (Kroger) は2025年9月、オーガニック・自然志向のプライベートブランド (PB)「Simple Truth (シンプルトゥルース)」から、高タンパク質に特化した新ライン「Simple Truth Protein (シンプルトゥルース・プロテイン)」を立ち上げた。
まずは、タンパク質を豊富に含むインスタントコーヒー、オートミール、パンケーキミックス、クラッカー、スムージーキューブなど、加工食品を中心に80品目以上を発売し、2026年1月には、さらにカッテージチーズやエネルギーバーなど24品目を追加投入している。
これらの商品はいずれも、健康とタンパク質を重視した食生活をサポートするように設計され、タンパク質を値ごろな価格で簡単に美味しく摂取できる点が特徴だ。また、人工着色料や人工香料、防腐剤などの不要な原料は使用していない。
クローガーは「2025年の5大フードトレンド」のひとつとして「タンパク質の復興」を挙げ、「タンパク質は、筋肉増強のための手段にとどまらず、一日を通してエネルギーレベルを維持し、健康全般をサポートしたい人々からますます求められている」と分析していた。「Simple Truth Protein」は、このトレンドを踏まえて立ち上げられたと見られる。
さらに同社の「2026年の6大フードトレンド」では、このトレンドが「タンパク質と食物繊維のシナジー」に進化すると予測。「腸の健康と持続的なエネルギーを求める傾向が強まる中で、食物繊維と組み合わせた高タンパク質商品のニーズが高まる」と見通している。
英SMのセインズベリー (Sainsbury’s) は2026年6月、消費者が手間なく食物繊維の摂取量を増やせるよう、食物繊維が豊富であることを示す独自の栄養表示ラベル「Full on Fibre (フル・オン・ファイバー)」を導入した。
豆、ブロッコリー、オレンジ、ブラックベリーなど食物繊維が豊富な青果物をはじめ、「地中海風ベジバーガー」や「スパイス仕立てナッツ&シードとアップルのグラノーラ」といったPBの新商品を含む500品目以上を対象に、商品のパッケージや陳列棚、ネットスーパーで表示している。
英国政府は、成人の食物繊維摂取量として1日あたり30gを推奨している。しかし、2019~2023年の全国食事栄養調査 (NDNS) では、この推奨量を満たしているのはわずか4%にすぎず、18~64歳の1日あたりの平均摂取量は16.4gだった。
また、セインズベリーの調査によると、4人のうち3人は「食物繊維について理解している」と回答したものの、食物繊維が豊富な食材として果物を認識していたのは52%、豆類は58%と、いずれも半数程度にとどまっている。
セインズベリーのサイモン・ロバーツCEO (最高経営責任者) は「健康的な食事は難しかったり複雑なものであるべきではないが、多くの家庭はそう感じている」と消費者の実情を分析したうえで、「セインズベリーは複雑な要素を取り除き、誰もが手軽に良質な食品を選択できるようにすることを目指す」と述べている。