NRFの2025年度「米国小売業トップ100」
このランキングで1位になったのは、ウォルマート (Walmart) だ。売上高は対前年比7%増の5687億ドル (82兆4615億円:1ドル=145円で換算) で、2位以下を大きく引き離した。主力のスーパーセンター (SuC) や傘下のメンバーシップ・ホールセール・クラブ (会員制倉庫型卸売小売:MWC) サムズ・クラブ (Sam’s Club) を含めて、米国内の店舗数は5206店にのぼる (2025年4月末時点)。
2位のアマゾン・ドット・コム (Amazon.com) も米国の小売事業が好調に推移し、売上高は同9%増の2736億6000万ドル (39兆6807億円) になった。
直営の食品スーパー (SM) アマゾンフレッシュ (Amazon Fresh) や傘下のホールフーズ・マーケット (Whole Foods Market) を中心に、米国内の店舗数は600店を超えている (2025年7月時点)。
3位にはMWC最大手のコストコ・ホールセール (Costco Wholesale) がランクインした。売上高は同4%増の1830億5000万ドル (26兆5422億円)。米国内の店舗数は625店で、州別ではカリフォルニア州が143店で最も多い (2025年7月時点)。
業態の垣根を超えて、圧倒的な価格訴求力を強みとするプレイヤーが売上高を伸ばし、ますます存在感を高めている。
ドイツ発のハードディスカウントストア (HDS) のアルディ (ALDI・14位) やカリフォルニア州を拠点に540店以上を展開するアウトレット型SMのグロサリー・アウトレット (Grocery Outlet・95位) では、売上高が前年から2ケタ伸長した。
また、日本の100円ショップに相当するダラーストア業態では、ダラーゼネラル (Dollar General・17位) とダラーツリー (Dollar Tree・19位) が上位20社にランクインしている。
MWCのビージェイズ・ホールセール・クラブ (BJ’s Wholesale Club・22位) も売上高が同6%増と堅調に伸びている。2025年7月時点で倉庫型店舗255店を展開し、今後2年間で25~30店を出店する計画だ。
アルディは、2024年の売上高が対前年比14%増の541億6000万ドル (7兆8532億円) と伸長し、「米国小売業トップ100」で2番目に高い伸び率となった。
2024年3月にサウスイースタン・グローサーズ (Southeastern Grocers) から食品スーパー (SM)「ウィン-ディキシ (Winn-Dixxie)」と「ハーベイズ・スーパーマーケット (Harveys Supermarket)」約400店を買収したことが、その要因のひとつだ。
なお、2025年2月には、そのうちの約170店を食品卸大手C&Sホールセール・グローサーズ (C&S Wholesale Grocers) などが参画する投資家コンソーシアムに売却した。残りの約220店を対象に「アルディ」への業態転換を2027年までに完了させる計画だ。
「2028年末までの5年間で800店を出店する」という成長戦略の下、新規出店も加速している。
2024年に約120店を出店し、店舗数ベースで米国第3位の食品小売チェーンとしての地位を確立した。2025年にも225店以上の出店を計画し、同年4月にはネバダ州ラスベガスで初出店している。
アルディの強みは、圧倒的な安さだ。定番商品70品目を対象とした米国の価格調査では、4人世帯でナショナルブランド (NB) からアルディのプライベートブランド (PB) にブランドスイッチすると最大36%安くなり、年間約4000ドル (58万円) を節約できることが示されている。
「米国小売業トップ100」でアルディに次ぐ伸び率を記録したのが、53位のスプラウツ・ファーマーズマーケット (Sprouts Farmers Market、以下スプラウツ) だ。2024年の売上高は同13%増の77億2000万ドル (1兆1194億円) と2ケタ伸長した。
2024年には33店を出店し、店舗数は米国24州で計440店となった (2024年12月時点)。州別では、カリフォルニア州が149店で最も多く、テキサス州がこれに次ぐ。
スプラウツは、オーガニックやグルテンフリー、ヴィーガン、フェアトレードなど、健康マニアやこだわり志向の消費者をターゲットとした独自の品揃えが強みだ。オーガニック商品の取扱品目数は4000品目以上で、売上高構成比は30%にのぼる。
カテゴリー別では、青果・精肉・鮮魚・総菜を中心とした生鮮食品の売上高が約6割を占めている。青果では170の地元農家と提携し、地産地消も推進している。
また、PB「Sprout Brand (スプラウト・ブランド)」の商品開発にも注力し、2024年には300品目の新商品をリリースした。PB商品の売上高は17億ドル (2465億円) で、売上高全体の約23%を占めている。
実店舗を中心としながら、オムニチャネル化にも積極的に取り組んでいる。2024年にはECの売上高が10億ドル (1450億円) を超えた。
スプラウツの売上高は2025年も前年を上回るペースで伸長している。2025年上期の売上高は対前年同期比17.9%増の44億5703万ドル (約6462億円)。通期ベースの売上高伸び率は14.5~16.0%を見込んでいる。