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(株)紀ノ国屋 代表取締役社長 増井徳太郎氏
100年目を迎える歴史ある小売業が
新しく取り組む挑戦的売場づくり
(株)紀ノ国屋/明治43年創業。店舗数9店。事業内容は、多数の輸入品を扱う食料品専門店を東京・神奈川で展開。住所東京都港区北青山3-15-7。

 明治43年(1910年)に創業し、長き歴史を有する食品小売業が紀ノ国屋である。
 そして2006年は、この100年近い歴史を誇る紀ノ国屋にとって、大きな転換点になった年である。
 一つは、創業の地でもある東京港区南青山の、象徴ともいえるインターナショナル店の建て替え。
 もう一つは東京メトロ・表参道駅の改札内店舗「OMO KINOKUNIYA」の出店である。
 前者は、2008年の完成を待つばかりの慶事だが、後者は実はこの“歴史ある企業”に新しい風を吹き込んだ出来事であった。
 「最初は、駅の改札の中の30坪ほどの小さな店ですから正直、出店を迷いました。しかし、若い人たちからの“やってみたい”という声もあって出店を決めたのです」増井太郎社長は、こう語った。
 そしてこの「OMO」が、実は、絶好調なのである。
 駅の中という立地もあって、1日の客数は3000人。しかも、売上げは当初計画の1.5倍で推移している。
 「OMO」の品揃えコンセプトは“おにぎりからシャンパンまで”。紀ノ国屋が長年こだわってきた、安全・安心ですぐ食べられる商品から、ちょっとご馳走の商品までを品揃え。例えばシャンパンなどは、全9店舗のなかで、月間で最も多くの数量を売るほどの勢いなのである。
増井社長は大学卒業後、アメリカ・フロリダのSMチェーン「パブリックス」にも勤務した経験がある。2001年からは日本セルフ・サービス協会の会長も務め、現在は3月開催のスーパーマーケット・トレードショーの成功に向け活躍中である。
 そのほか惣菜やチーズ、リカー類、小型の持ち帰りしやすいパンなどが、昼食を求めるお客、あるいは帰宅を急ぐOLなどに大人気である。
 品揃えは2週間程度をめどに変更していきながら、顧客の支持をリサーチする態勢をとる。
 これまでの紀ノ国屋は“長年、買物を続けてきたロイヤルカスタマーから根強く支持される店”であった。同時に、強烈な固定ファンがいる店ゆえに、品揃えを変更したり、商品を改廃したりすることは、実に難しかった。
 そんななかで「OMO」は、他店の品揃えにとらわれず新しい商品の販売に挑戦し続けているのだ。若手のスタッフたちの、自らチャレンジしたい商品が随所にあふれた店なのである。
 これが目の肥えたOL、おいしいものを知る都会の女性客に支持されている理由である。
 実は、「OMO」を始めるにあたって増井社長が社員に強調した言葉がある。
 「ロゴの『紀ノ国屋』の文字は小さくして、新しい商売に挑戦するような気持ちでやってみようと言いました。もちろん、今までのお客さまの根強い支持は大切なものですが、同時に新しいお客さま、新しい商品にチャレンジできる企業にしたかったからです」
 そんな狙いは、従業員にも、新しいお客さまにも通じた。
 同時に、「OMO」の新しい品揃えの一部は、既存店へも波及させ、新しい品揃えに結び付けている。
 一方で、“守るべきもの”は、絶対に譲らないのもこの企業の強さかもしれない。
 安全・安心を追求する有機無農薬の農産物への取り組み、自社工場で生産するこだわりのパン、お客さまの半数もが持参する店もあるエコロジーバックの取り組みなど、“紀ノ国屋らしさ”はしっかり守っていく。
 実は、紀ノ国屋という企業、100年近い歴史を有する小売業であると同時に、50年前の昭和28年(1953年)には、日本で初めてセルフサービス方式のスーパーマーケットを始めている。
 長い歴史と同時に、大いなる革新性も備えた企業、それが紀ノ国屋である。
 そして2006年。この年は、伝統に磨かれた企業が、30坪の店をきっかけにして、再び革新性を発揮し、新しい挑戦を始める出発点になったのだ。

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