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(有)朝日屋 代表取締役社長 柏木 静生氏
今心血を注いでいるのは飼育農家が
今後も安心して松阪牛の生産に
従事できる事業体づくり
(有)朝日屋/昭和33年7月設立。産地から店頭まで一貫流通体制を確立。年商37億円。従業員数約100名。本社は三重県津市北丸之内20

 「精肉は多店舗展開して売る商品ではない」。20歳で朝日屋の経営を任され、約半世紀この道一筋に生きてきた柏木静生社長の言である。
 この言葉には「精肉の命である品質管理を他人に任せるような商売はしたくない」という柏木社長の強い意志が込められている。
 そこから “一店(点)集中主義”という言葉が生まれた。「一店(点)
集中主義には一店に集中するという意味と精肉という一つの小さな分野でその深さを極めていくという二つの意味が含まれているのです」と柏木社長。
 昭和33年、後継者がいなかった朝日屋の経営者朝日敬三さん(故人)から「のれんは変えない」というたった一つの約束でその経営を引き継いだ柏木社長の当時からの信念である。
 実家が精肉店を経営していた関係で、子供の頃から店の手伝いをし、高校生の時分にはもう一角の腕前に達していた。だからいつでも店を持てる状況にはあった。
 だが、柏木社長は高校を卒業するとまったく別の世界に飛び込んでいる。「自分の腕一本で食える職業」を目指してプロスポーツの世界に飛び込んだのだ。選んだのは競艇??。400人のうち、たった15人しか受からなかった狭き門をくぐって18歳でデビュー。負けず嫌いの性格がここでも顔を覗かせ、次代を背負うホープと期待を寄せられていた。
飼育農家と一緒に松阪ブランドを育ててきた柏木社長は毎年チャンピオン牛を落札するのを楽しみにしている。
 そんな折に舞い込んだのが先の「肉屋をやらないか」という話だった。迷った挙句、先の条件で営業権を譲り受け、土地と店を借りる形でスタートしたのが柏木社長のこの道でのデビューとなったのである。
 当時の朝日屋は30坪の小さな店だった。腕に覚えがあるとはいえ、初めての経験だから不安だらけだった。だが、柏木社長は競艇の研修時代に叩き込まれた集中力を発揮、資金を貯めるために編み出した“つもり貯金”を心の支えにして懸命に働き、ついに27歳の時蓄えた資金で土地と店を譲り受け、名実ともにオーナー経営者となった。
 そしてこの時、実父のアドバイスもあって家畜商の資格を取得、牛の勉強を本格的に始め、週休を利用して三重県内の牛の飼育農家や産地を訪ね歩いている。
 柏木社長には心に決めた産地があった。それが七保牛で知られた度会郡七保村(当時。現伊勢農協大宮町七保和牛部会)だ。麦、ふすま、大豆かすなどの単味飼料でジックリ育てる七保の牛の仕入れを、柏木社長は着実に増やしていった。
 「当時、年3回セリがあって、あるセリの時、値がセリ上がって、結局私一人で買う羽目になった。そのときセリ落とした価格が前回を上回ったことから、飼育農家が一様に感動し、朝日屋一本に取引を絞ることに賛同してもらったのです」(柏木社長)という。
 以後、朝日屋は七保地区の牛全頭を買い付け、価格決めも飼育農家に任せている。「農家に価格を決めさせているのは、全国広しといえども朝日屋だけだろう」と柏木社長。それは農家に安定した収入を保証し、安心して飼育に励んでもらいたいという柏木社長の強い信念から来ているものである。

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