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潮目が変わった!?ニッポン食品流通業
最新「商業統計」が映し出す食品スーパーの商機と勝機
2007年(平成19年)調査の「商業統計」が発表されました。商業統計は、全小売業、卸売業の販売高および事業所数、従業員数など商業の全体像を数値で表すもので、経済産業省によって取りまとめられています。果たして、日本の商業実態と食品スーパーを取り巻く環境はどうなっているのでしょうか。
文/写真・山本恭広(株)商業界/『食品商業』 編集長
改正まちづくり三法以降、食品スーパーを核とした近隣型ショッピングセンターに各社が参入している
ー潮目が変わったー
最近、流通業界はじめ経済各界のトップから異口同音に聞かれる言葉です。
暖流、寒流といった異なる性質の海流が交わる地点であり、漁獲における好適ポイントとも意味されるこの言葉は、商売にとって、好機が来たとみていいのでしょうか。
卸売業と小売業の販売額の合算が545兆2506億円(図表1)。
これが2007年の商業全体の販売額です。前回(04年)調査と比べて1.2%増。前々回(02年)調査時が1.8%減であることを考えるとわずかに持ち直したようにみえますが、店数を示す事業所数は147万995店と8.8%減、数にして14万店以上の減少となりました。店舗数は1997年の172万店をピークに減少が続いています。
内訳をみると、卸売業は販売額が410兆6789億円(前回比1.3%増)、事業所数が33万4240店(同10.9%減)、小売業は134兆5717億円(同1.0%増)、113万6755店(同8.2%減)。ともに販売額は微増ながら、事業所数は大幅に減少しています。また、就業者数も卸売業、小売業ともに減少。商業全体のパイは縮小しているのです。
“何でも揃える”“広く集める”業態(百貨店、総合スーパー)の凋落
卸売業について、業種別の年間販売額の増減は以下のようになっています。
「食料・飲料」(40兆5289億円、前回比7.5%減)
「農畜産物・水産物」(34兆8900億円、同18.1%減)
「衣服・身の回り」(12兆4336億円、同11.5%減)
必需品の分野はいずれも減少。代わって、「鉱物・金属材料」(58兆8806億円、同48.3%増)が必需品分野の減少幅以上の伸びを示しています。これらは、新興国を中心とした需要増と原料高騰などによる押し上げとみられます。
また、表には出ていませんが小売業における「飲食料品小売業」の年間販売額は40兆8101億円(前回比1.3%減)という数値が出ています。約134兆円ある小売業全販売額のうち最大シェア(30%強)を占めるこの分野が食品スーパーの主戦場となりますが、マーケット自体は横ばいといえます。
これに次いで大きなシェアを占める「その他の小売業」(40兆3574億円、同10.9%増)が、目覚ましい伸びをみせています。
その他の内訳をみると「燃料小売業」(12兆7335億円、同16.4%増)の伸びは原油高によるもの。これに続く伸びを示す「医薬品・化粧品小売業」(8兆4763億円、同14.2%増)はドラッグストアが展開するマーケットであり、今後、成長が期待される「健康・美容市場」の中心として、注目していいでしょう。
業態別にみてみます(図表2)。
「百貨店」は店数(272店)、販売額(7兆6883億円)ともに引き続き減少。特に販売額は約3000億円の減少となりました。
「総合スーパー」は1583店、7兆4397億円。92店、1兆円近い売上げを失っています。
「食料品スーパー」は1万7882店(前回比3.3%減)。販売額は17兆534億円と横ばい。
「ドラッグストア」は、店数は減少しましたが、販売額は4000億円以上の上積みとなっています。
ピーク時の97年と比較すると、百貨店は約3兆円、総合スーパーで2兆5000億円の売上げを失いました。食料品スーパーは14兆7681億円から約2兆3000億円の売上げ増を果たしました。同年は、消費税が3%から5%に引き上げられたほか、平成不況が一段と深刻化した年です。
ちなみに、この年に日本チェーンストア協会の既存店売上げは前年割れを起こし、以降、昨年まで、11年連続で前年割れを続けています。
ここに、「百貨店」「総合スーパー」と、“何でも揃える“広く集める”大商圏型フォーマットの衰退がみられます。対して、日常食という必需品に絞った、小商圏型フォーマットである食料品スーパーは、手堅さを出しています。これは「コンビニ」が依然として伸びを堅持していることにもみられます(コンビニの場合、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートなど上位チェーンによる寡占化が進んでおり、新規参入は考えにくい)。
「食料品スーパー」をもう少しみていくと、総売場面積(1933万3339平方メートル)と年間販売額から算出した1店舗当たりの売場面積は1046平方メートル、販売額は9億2300万円。日本の人口(約1億2700万人)を総店舗数で割ると1店舗当たり7100人、約3000世帯となります。売上げの基礎となる一次商圏分のマーケットしか持たないのが現況の日本のSMといえるのです。これに総合スーパーの食品フロアなどを加えるとさらにマーケットは絞られており、厳しい競合環境にあるといえます。
店舗数減少の傾向をみる限り、「ドラッグストア」「ホームセンター」ともに商圏は縮小しているともいえます。これらは食料品スーパーがネイバーフッドショッピングセンター(NSC)に出店する際の第二核店舗となるフォーマットです。
昨年11月以降、「改正まちづくり三法」の全面施行により、店舗面積1万平方メートルを超える商業施設開発が困難になりました。従って、「1万平方メートル以下の商業施設」、つまり、本命ともいえるNSC開発に各社とも参入することが予想されます。しかし、核店舗となるSM、ドラッグストア、ホームセンターなどの店舗も狭い商圏での戦いを強いられるわけで、今後の競合はNSC間へとシフトすることになりそうです。
“統合・集約”のメリットと“短時間購買”店の強さ
食料品スーパーでは生鮮食品売場での人的能力が競争力を決める
食マーケット40兆円の勢力図はどうなっているのでしょうか。
『食品商業』誌(2008年4月号)が調べたところによると、現在、約1500社あるといわれる国内食品スーパー企業のうち、売上高500億円以上の企業は98社、1000億円以上となると49社。1000億円以上で14兆円強、500億円以上も加えると約18兆円となり、シェアでみるとそれぞれ35%、45%となります。
企業グループ別の勢力でみると、2強といわれるセブン&アイ、イオンが、SMチェーンを含むグループ売上高でそれぞれ約5兆7000億円、5兆2000億円を築いています。うち食品構成比を50%とした場合、それぞれ3兆円弱としても、どちらも食マーケット全体の1割に満たないのです。さらに共同仕入れ機構などスーパーマーケットのグループ別にみると、各加盟企業売上高の合計がCGC3兆5000億円、ニチリウ(日本流通産業)2兆8000億円、そしてオール日本スーパーマーケット協会にしても1兆6000億円の規模となります。これに約3兆円超の規模を持つ生協グループを加えると、日本の食マーケットは6つの勢力に分けられるといえます。
中でも、国内最大共同仕入れ機構のCGCグループは220社3200店舗で、加盟企業を合わせた全売上高は3兆5000億円の規模を持ち、2強への対抗軸として筆頭に挙げられます。ただし、全国9つの地区本部、支社を通じて国内を網羅するグループながら、年商500億円以下の企業が9割を占めているため、グループメリットの最大化を進行すべく、商品開発や情報システムなどの機能統合を進めています。
CGC、ニチリウともこの一両年は設立35周年という節目を迎え、さらに結束を強めています。昨今の原料高による商品調達および開発コストの上昇が背景にあるからです。物流、システムなどのインフラを統合・集約すべきところを選択し、生産性を高めることが必要な時代であることを示します。
もちろん、数を合わせただけでは、個々の企業、店の競争力向上に直結するわけではないし、店対店の戦いに勝つことが約束されるわけではありません。食品スーパーの場合、売上構成比の4割以上を占める生鮮食品の取り扱いについては、個々の企業における業務システムのレベルの差が、そのまま店頭に出るのです。生鮮加工品メーカーのレベル向上により、生鮮商材の店内加工度比率は下がってきてはいますが、店頭での、品質を見分ける目利き、加工調理、見切り、または一部対面など販売それぞれにスキルの向上がまだ必要とされています。この部分は、個々の企業における人材開発が必要でしょう。
結集することで合理化、効率化を行いつつ、個々の店でしかできないことにコストをかけ、地域における個性や差異性の発揮をする。食品スーパー、コンビニに関する月次統計をみると、今春から既存店売上高の回復を示す数値が出ています。これは昨今の原油高騰から始まるガソリン代の上昇が車での買い物を手控えさせ、“より近く”短時間で買い物を済ませることのできる店へのシフトを示しています。1店舗当たりの基礎商圏が約3000世帯と先述しましたが、“近隣から”“何度も”来てもらえる店づくりの“潮目”はこの部分にあるといえます。
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