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4月1日「改正パートタイム労働法」施行
パートタイマーの「働き方」「雇い方」転換に備えよう
店舗運営に不可欠の戦力となったパートタイマーの「働き方」と「雇い方」が変わろうとしています。その概要とチェーンの対応をみてみましょう。
文/写真・山本恭広(株)商業界/『食品商業』 編集長
パートタイマーはじめ「非正規雇用者」が店舗運営の中心になっている(本文と写真は関係ありません)
ライフコーポレーション、パートタイマーの定年を70歳まで延長
(雑貨専門店)ロフト、パートタイマー全員を正社員化
これらは、今年に入ってからのパートタイマーをめぐるニュースです。パートタイマー社員の処遇改善に向けて、流通業各社の動きが活発になってきました。
今年4月、「改正パートタイム労働法」が施行されました。
「パート労働法」とは、正社員に比較して1週間の所定労働時間が短い労働者を対象とした、雇用管理の改善および福祉の増進を促した法律であり、「パートタイマー」だけでなく、「アルバイト」「嘱託」や「契約社員」「準社員」などの呼称であっても、上記条件にあてはまれば、同法の適用対象となります。
今回の改正の要点は主に3つ(図表(1)参照)。
第一に「労働条件の明示」。雇い入れの際、仕事の内容や賃金、転勤だけでなく異動の有無などの労働条件について、あらかじめ明示することが義務付けられました。この説明義務は、雇い入れ後も、人事担当者だけでなく、店長など管理監督者に当たる者にも説明責任が伴います。
第二に「パート労働者の待遇は働き方に応じて決定する」というもの。
これはフルタイムに近い勤務や日中4〜5時間勤務など、労働時間から仕事の内容まで、さまざまな働き方に応じて適正な処遇を義務付けたもの。職務内容が近しいものであれば、賃金や教育機会や福利厚生の提供において差別を禁止する、いわば「同一労働同一賃金」の原則が適用されたといえます。
そして第三のポイントは「正社員への転換機会の確保」です。
また、改正法では、これらの適用に際し、働き方に応じてパートタイマーも「正社員と同じ」「職務と活用が同じ」「正社員と職務が同じ」「正社員とは異なる」の4つに分類されます。その上で、賃金、教育・訓練、福利厚生において、「差別禁止」「配慮義務」「努力義務」といった段階的な適用が規定されているのです。
正社員並みの階層と待遇設計に移行するスーパー各社
※(株)商業界/『食品商業』編集部 1月調査
厚生労働省の「労働力調査」によると、2007年時点の国内雇用者(役員除く)は5174万人。うち「非正規雇用者」は1732万人と3分の1を超える比率となりました。パートタイマーに限っても1164万人と雇用者全体の2割強を占めています。特にスーパーマーケット産業ではパートタイマーが7割以上を占めており、運営上、不可欠の戦力となっています。
こうしたパートタイマー労働者の量的拡大に加え、職務内容や責任など勤務実態が正社員に近づきつつあるのに、賃金や福利厚生、教育など待遇が見合っていないという問題が指摘されてきました。今回の改正法はこうした問題を是正しつつ、パートタイマーの能力をより発揮できる環境整備を企業に求めることを主旨としており、企業にとっては、パートタイマーに対する処遇の大転換を迫られる契機になります。
これまで、パートタイマーは店舗におけるマンパワーの中心でありながら、店舗への配置に先立った集合教育や事前研修などが施される正社員と異なり、能力開発には企業間格差がありました。
特に食品スーパーの場合、品ぞろえが多岐の部門・品種にわたることや、生鮮加工業務を店内に擁することもあって、レジチェッカー、補充・品出し、生鮮加工・調理などのそれぞれの限定業務に集中投入されることはあっても、発注業務など売場の一連の業務を任せる機会はつくれませんでした。
とはいえ、図表(2)からも分かるようにパートタイマーの平均年齢は40歳代後半。多くのチェーン各社の正社員平均年齢である30歳代を上回ります。この世代には学卒者も多く、企業勤務などの社会経験もある上、組織での仕事の仕方も理解しています。こうした前提に立って、店舗業務をこなすパートタイマーも多くみられるようになりました。こうして店舗における中心戦力となるにつれて、パートタイマーに対する処遇や待遇改善の仕組みを整える企業も出てきました。
先のライフコーポレーションでは、現行64歳となっているパートタイマーの定年を70歳まで引き上げました。施行は5月からとなっており、約1300人が対象になります。これは、「正社員並み」とされるパートタイマー社員を、正社員と同じ条件に改善するという点で、改正法の主旨にかなっているといえます。
また、イオングループの、食品スーパー、マックスバリュが進めている制度では、パートタイマーを「フレックス社員」として、チーフに相当する「フレックスリーダー」や店長クラスの「フレックス店長」まで正社員と連動させた階層を設定しており、教育だけでなく給与体系もほぼ連動させています。
北海道のアークスグループでも、パートタイマーに対して、「パートナーリーダー」を筆頭に、短時間勤務に対応した「メイト」まで4段階に設定し、勤務時間や仕事の内容など働き方に応じた人事制度を導入しました。同制度は、中核チェーンのラルズだけでなく福原、ふじなど道内の地域子会社すべてに適用されています。これもまたグループ統一の制度として、普遍性を持たせたものとなっています。これも改正法の主旨に対応したといえます。
目玉の一つとされる「正社員転換」については、『食品商業』編集部で、食品スーパー各社にパートタイマーに対する処遇についてのアンケートを行ったところ、8割以上の企業で「既に制度化している」との回答が出ています(図表(3)参照)。今後、パートタイマーの管理職登用が人事上、不可欠となることが分かります。先のイオングループでは、マックスバリュ東北でパートタイマーであるフレックス社員からの店長登用が行われており、同グループにおける登用の先行事例になりました。
ただし、実際の導入に際し、当該社員の多くは女性であり、結婚から出産、育児などの家庭環境の変化に応じた働き方が求められ、自分で選択できる環境でないこと(つまりは男性の家事参加が不足していること)や、扶養者控除の問題もあり、制度上というよりも環境面において登用には壁があることも事実です。
パートタイマー(処遇)改革が生産性改善にもつながる
労働力確保のためにもパートタイマーの処遇改善への取り組みは必要だ(本文と写真は関係ありません)
※(株)商業界/『食品商業』編集部 1月調査
パートタイマーの処遇において注目したいのがヤオコーグループです。
埼玉に拠点を置く同社は、昨年5月に、「従業員への自己株式譲渡」を行いました。正社員、契約社員だけでなく、パートタイマーの一部も譲渡対象としたもので、全従業員1万名のうち約2000名が対象となりました。
18期連続の増収増益(07年3月期時点)で業界屈指の優良チェーンといわれるヤオコーの特徴は「ライフスタイルアソートメント」と「ミールソリューション」を強化したMDにありますが、その原動力として同社の川野幸夫会長は「全員参加型経営」を掲げています。いざとなったら“額にハチマキ”のごとく全員一丸となって運営に当たるマンパワーを表現する言葉と思われていましたが、まさに名実ともにパートタイマーまで含めた従業員も株主として、“経営に参画”してもらう体制をつくったともいえます。
パートタイマーの戦力化に当たり、人口減少による労働人口の不足や年金財源への不安もあって、労働力確保に向けた法整備が活発化しています。パートタイマー労働法に加え、2年前に施行された「高年齢者雇用安定法」は、定年延長または廃止によって、労働力としての高齢者の活用を促すものでした。
店内加工や販売など人手を介する要素の強い食品スーパーの場合、人材活用の制度整備に際しては、法の施行に合わせたり、他社の動向をにらみつつ対応を検討しようとするのではなく、進んで取り入れ、さらなる生産性向上に結び付ける積極性が必要でしょう。チェーンストアの組織問題や労働問題に詳しく『チェーンストアのパートタイマー』の著者でもある国學院大学経済学部・本田一成准教授は「パートタイマーは、基幹労働力となっており、人件費の削減だけを目的としては見誤る。正社員との仕事の重なりが増えてきていながら、待遇格差は大きい。(改正法を機に)その是正をコストとしてとらえず、チェーンストアが今後も生産性を高めるためのあるべき方策としてとらえるべき」としています。
「改正パートタイム労働法」は「働き方」と「雇い方」の意識転換を迫っているのです。
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