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誰が価格を決めるのか
ー食品メーカーの値上げラッシュ下で行った
チェーン各社“価格凍結”の真意ー
食品メーカーによる値上げラッシュが続いています。一方、食品スーパーの側では
「価格凍結」の動きが出ています。値上げをめぐる製・配・販の綱引きとその背景をみてみます。

文/写真・山本恭広(株)商業界/『食品商業』 編集長
114品目を対象に「価格凍結」を行ったイオン(写真は品川シーサイド店)



値下げ対象とされる品目は生活必需品ばかり。「価格凍結」のインパクトは十分
 食品の値上げが続いています。
 この数年、円安による輸入品の価格高騰が続き、昨年にはワイン、コーヒーなどの輸入食品の値上げが行われました。
 そして今年5月には100%果汁飲料の値上げが行われ、6月にはキユーピーがマヨネーズの値上げを行いました。これは17年ぶりのこと。これを皮切りに別表のように、従来“物価優等生”であった生活必需品の値上げが相次ぎました。
 また、国際的な穀物相場の高騰もあって、8月末に農林水産省は輸入小麦の政府売渡価格を10%程度引き上げると発表しました。これを受けて、製粉各社は11月から小麦粉出荷価格の値上げに踏み切るとみられています。そうなると小麦粉の二次加工メーカーである製パン、製菓、製麺各社とも製品価格の引き上げが不可避となりそうです。
 世界的な異常気象に伴う農産物の不作、また石油代替燃料として注目されているバイオエタノールの需要拡大によって、小麦、果実、コーヒーからサトウキビ、トウモロコシへの転作が進んだことも食品原料の価格高騰を招いています。
 以上のことが背景にあり、「原材料価格の高騰」を理由にメーカー各社が値上げを発表しているのです。

チェーン各社で「価格凍結」宣言

 8月7日、イオンが「価格凍結」宣言を行いました。飲料、加工食品、ペーパー類などの消耗雑貨を中心に114品目を対象に“上限価格”を定め、凍結を行ったのです。食パン、即席麺、果汁飲料、ティッシュペーパーなど、小麦粉やパルプなどの原価高騰が進んでいる製品ばかり。これらは“誰もが”“ほぼ毎日使う”“購買頻度が高い”生活必需品です。従って、消費者も価格に敏感(安さが必要)になります。それだけに低価格での凍結はありがたいものです。
 季節品などの入れ替えはあるとしても、イオンの「価格凍結」は年内いっぱい続けるものとみられています。当初は直営380店舗での展開から始まりました。グループの食品スーパーであるマックスバリュ西日本は同日、マックスバリュ東海は14日からの実施。このあたり、同プロモーションを実施する意思決定の速さとグループ会社の足並みの微妙なずれがあったともいえそうです。いずれも年内いっぱい続けるものとみられています。
 イオンの「価格凍結」が他社に与える影響はどうでしょうか。
 イオンと並び国内2大流通グループであるセブン&アイグループは「これだけモノが飽和している中で、ただ安くしただけではお客さまは買ってくれない」としながらも、部分的な特売で対応しています。かつて、同グループは、「消費税還元セール」など消費者心理を突いた販促を得意としてきたのですが、やはり今回は、“価格凍結戦”からは一歩引いている観があります。
 しかし、地方スーパーでは対応が始まっています。
 9月1日には、食品スーパー220社3100店を擁するCGCグループが「食卓応援価宣言」として、同グループの開発商品であるCGCブランドを中心に、食用油、即席麺、乳製品など約80品目の「価格凍結」を行いました。また、東海、北陸を中心に積極的な業容拡大を図るバロー(岐阜県)も「食卓応援」として、やはり必需品を対象に「価格凍結」を始めました。
 やや時間差はありながらも、国内最大のボランタリーグループや有力リージョナルチェーンも追随することになり、価格凍結の余波が出ているのです。
 お客さまに最も近い場所でビジネスを行う食品スーパーにとって、“価格を上げない”という姿勢をいかに示すかの競争に入っているともいえます。
 1970年代のオイルショック時、米国大統領であったニクソンは「プライスフリーズ」として、物価と賃金の“凍結”を断続的に行い、インフレの影響による価格上昇を抑え込む政策を行いました。
 当時の日本でも、チェーンストア各社が生活必需品の一部で「価格凍結」を行い、成長盛りであったチェーンストア産業の存在感を消費者に見せつけました。

誰が価格を決めるのか

 「われわれが(製品価格引き上げの)ヘッジになることはない」
 これは今年8月、大手卸・菱食の後藤雅治社長が『食品商業』のインタビューに対して語った言葉です。製品価格の引き上げが不可避の中、売価を上げたくないとする小売りの要請に折り合いをつけて、コストをかぶることはない、という意味です。中間流通業は、多種多様なメーカーと小売店をつなぐ配送機能を担っていながら、「営業利益率1%」といわれるように、非常に薄い利幅で成り立たせなければならないという低い収益性を強いられています。効率的な物流機能に必要な配送施設やシステム投資に加え、昨今のデフレによる一品単価やケース単価の低下もあって、さらに収益性は逓減傾向にあります。先の菱食でいえば、ここ5年間で1兆円から1兆4300億円へと売上げは40%強増やしながらも、営業利益は86億円から57億円へと逆に減少しており、もはや営業利益率1%の確保も難しくなっています。自ら製品開発をするメーカーや、マージンミックスなどによって利益改善の余地がある小売業と違い、中間流通の利益創出の余地はわずかです。「(メーカーからの出荷価格が上がっているのに、値上げが認めてもらえなければ)卸すことができない」と暗に取引先(小売店)の選別を示唆する発言も出ています。
 従来の小売りと卸の力関係の中で一方的に“差額”を負担するという余力はもはや出てこないともいえそうです。
 誰が価格を決めるのかーーーこれは店を選び、売場の商品を見て購買を決めるお客さまに他なりません。
 しかし、本来、チェーンストアは生活者の立場にたった“エブリデー、エブリボディ”グッズの価格と品質の提供を通じて、くらしを支えることが役割です。仕入れと調達、販売方法の革新を通じてナショナルブランド(NB)の価格引き下げを行い、かつてのダイエーの「セービング」からイオンの「トップバリュ」まで多くのチェーンストアが開発してきたストアブランド(SB)も日本独自のNBメーカーによる建値制度、いわゆる価格形成の仕組みを突き崩す取り組みの一環でもありました。
 その後、チェーンストアによるマーチャンダイジング(MD)は、商品企画から原料調達、製造、配送までを小売り主導のものとして組み込むなど本格的な商品開発へと移行したのです。
 その代表例といえるのが、先のイオンによる「トップバリュ」、そして今年5月に登場したセブン&アイグループによる「セブンプレミアム」ブランドです。さらにその発展形ともいえるのが、イオンが8月に始動させた3つの機能別会社です。「イオントップバリュ」「イオン商品調達」「イオングローバルSCM」と称するこの新会社は社名からもわかるように、商品開発や調達、物流機能などのMDに必要なサポートを、小売り(イオン)本体から切り離すことで、効率化を図ろうというものです。製と配にまで踏み込むことによって、「商品調達」から「価格決定」までの主導権をとろうとする動きとみてもよいでしょう。
 では価格は小売りが決めるのかーーーこれには戦々恐々とする人も多いでしょう。
 多くのメーカーと多くの小売店、そして中間をつなぐ卸売業のそれぞれが必要な機能をもっています。相当の寡占化がなされない限り、圧倒的な強者のみがすべてを決めるということにはなりません。製・配・販がそれぞれに果たすべき効率化を行い、次の再投資や再生産につながる適正利益を確保する。その上でお客さまに繰り返し買っていただける売価と品質のバランスはどこにあるのかを考え抜いた先に、店頭の「価格」が決められるのです。


主要メーカーのな価格改定品目(株)商業界『食品商業』が各社広報資料より作成
品目
メーカー
品名
改定前価格(円)
改定後価格(円)
時期
果汁
キリン
トロピカーナ ピュアプレミアム 1000ml
380
450
2007.5.22
トロピカーナ ホームメイドスタイル 1000ml
260
284
2007.5.22
トロピカーナ ホームメイドスタイル 500ml
130
143
2007.5.22
トロピカーナ 100%ジュース 1000ml
320
350
2007.5.22
乳製品
明治乳業
明治北海道十勝スライスチーズ(10枚)12×3 180g
300
330
2006.3.1
明治北海道十勝とろけるスライスチーズ(10枚)12×3 180g
300
330
2006.3.1
明治なめらかスライスチーズ (10枚)12×3 180g
300
330
2006.3.1
明治北海道十勝6Pチーズ 12×3 150g
300
330
2006.3.1
明治十勝カマンベール入り(6Pチーズ)12×3 120g
250
275
2006.3.1
森永
スキムミルク 250g
310
350
2007.7.1
加工肉
製品
(※)
日本ハム
シャウエッセン
※内容量の変更
150g→138g
2007.9.1
アンティエ (レモン&パセリ)
※内容量の変更
165g→150g
2007.9.1
中華名菜 酢豚の具
※内容量の変更
260g→245g
2007.9.1
チキンナゲット
※内容量の変更
185g→165g
2007.9.1
炭火焼ハンバーグ
※内容量の変更
312g→280g
2007.9.1
パスタ関連
日清フーズ
ディ・チェコ パスタ
約20%値上げ
2007.9.1
マ・マー トマトの果肉たっぷりのミートソース 285g
約13%値上げ
2007.9.1
マ・マー トマトの果肉たっぷりのナポリタン 285g
約13%値上げ
2007.9.1
マ・マー だしのうまみたっぷりの和風きのこ 285g
約13%値上げ
2007.9.1
マヨネーズ
キユーピー
家庭用・業務用
約10%値上げ
2007.6.1
ハーフ等健康訴求タイプ
約6%値上げ
2007.6.1
大口酒造
伊佐錦・黒伊佐錦 25度 1800ml瓶
1704
1810
2007.7.1
伊佐錦・黒伊佐錦 25度 1800mlパック
1683
1790
2007.7.1
伊佐錦・黒伊佐錦 25度 900ml瓶
916
970
2007.7.1
伊佐錦・黒伊佐錦 25度 900mlパック
895
950
2007.7.1
黒伊佐錦 原酒37度 720ml瓶
1724
1830
2007.7.1
伊佐錦 35度 1800ml瓶
2210
2360
2007.7.1
※加工肉製品は量目変更によるg単価の引き上げ

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