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テスコ エクスプレスの意味するもの
小型店を仕掛けるグローバル企業の戦略眼
カルフールの撤退、ウォルマート傘下にある西友の伸び悩みなど、
食品スーパーをとりまく外資の日本進出にも停滞感が出ています。
そんな折、英国最大、世界第3位の小売業であるテスコが日本1号店を
出店しました。果たして、その狙いと成算をどうみるべきでしょうか。

文/写真・山本恭広(株)商業界/『食品商業』 編集長
テスコ エクスプレス1号店となる大泉学園店



いくつかの必需品(同店では12品目)を低価格設定し、訴求するのもテスコエクスプレスの特徴
 今年4月、テスコ エクスプレスが東京都内に出店しました。場所は練馬区大泉学園。住宅街を背後に擁し、コンビニやドラッグストアなどが並ぶ生活道路沿いに位置する、住宅街と市街地の中間ともいえる立地です。
 テスコは英国に拠点を置くスーパーマーケットチェーン(5ページ図表参照)で、2006年度の連結売上げは約11兆円(2006年度・1ポンド245円換算)と、ウォルマート、カルフールに次いで世界第3位の小売業です。本拠地の英国では食品マーケットにおいて、20%以上のシェアを持つグローバルチェーンです。その世界規模の企業が”名実“ともに日本市場に出店したわけです。”名実“としたのには理由があります。
 実は2003年6月にテスコは、TOB(株式の公開買い付け)により、シートゥーネットワークを買収することで、資本上は日本への進出を果たしているのです。
 シートゥーネットワークは、冷凍食品、グロサリーなどの卸売りを主体としつつ、2003年時点で売上高440億円、「つるかめ」などの店舗名で当時70店舗強の小型スーパーを展開していた企業です。営業利益率7%と食品スーパーの中では群を抜いた収益性をあげていましたが、決して注目度の高い企業とはいえなかっただけに、買収が発表された時、意外性とともに、数ある流通企業の中から収益性の高い企業をパートナーとして選択するグローバル企業テスコの視点にも驚かされました。
 また、先立って、2000年のカルフール出店、2002年には、ウォルマートが西友との業務提携による資本参加で日本進出の端緒を開いたように、大型外資参入の動きが立て続けにみられ、いよいよ世界第2位の消費市場である日本国内が、本格的な流通再編の波にさらされたことが実感されたのです。
 しかし、その後、カルフールは、店舗業績の伸び悩みもあって撤退、店舗はイオンに譲渡されることになりました(運営会社としてイオンマルシェが設立された)。また、ウォルマートが資本参加した西友は、フォーマットや店舗運営システムにウォルマート流の仕組みを移植している途上にありますが、いまだ赤字を脱しきれず業績回復への道のりの遠さを感じさせます。
 一方、国内企業に目を転じると、イオンは、ジャスコなどの総合スーパーを核としたリージョナルショッピングセンター(SC)やSSM「マックスバリュ」の大量出店を進めつつ、マイカル支援や、カスミやベルクなどの地方スーパーとの提携を行うなどグローバル企業に伍する存在感を示し始めました。またイオンと双璧をなすセブン&アイは持ち株会社のもと、イトーヨーカドーなどの総合スーパー、ヨークベニマル、ヨークマートなどのSM、百貨店を擁するミレニアムリテイリングを束ねる形で、巨大流通グループを形成しました。これは異なるフォーマットながらも相乗効果の追求による収益性向上を図ると同時に世界の小売業との戦いに備えたものとも受け止められたのです。
 その間、日本は人口減少に転じ、半面、都心回帰による都市部への人口集中もあって、再開発ビルや話題の商業施設集積地に食品スーパーがテナント出店するなど、実は都市部が食品スーパーにとって、空白マーケットであったことも浮き彫りにされました。

「エクスプレス」(=短時間購買)が示す都市生活者のニーズ

 テスコは衣料、住居・家電を含めた総合型品揃えの大型店「エクストラ」、「スーパーストア」、都市型小型店の「メトロ」などの店舗タイプを持ちます。商圏や立地などの環境に応じた出店パターンを持つことで高いシェアを築いてきたともいえます。今回、日本に出店したタイプである「エクスプレス」はメトロよりもさらに小型のタイプ。”特急“という店名が意味するように、「ショートタイムショッピング=短時間購買」を意識したフォーマットです。
 1号店となった大泉学園店は売場面積約100坪。青果を先頭に、鮮魚、精肉、惣菜を壁面に展開、センター部分のゴンドラに菓子、加工食品を配置しています。菓子や調味料に一部のテスコブランドが入っていますが、典型的なミニスーパーといえます。店舗だけを見る限り、ナショナルブランドの一部に強い価格訴求などがある以外、生鮮食品の商品構成などには際立った競争力を見抜くことはできないでしょう。その後、テスコは同じ店名で世田谷などに同タイプの店を相次いで出店(5月時点で3店)しています。同社によれば、一両年で「つるかめ」含め35店の出店を計画しているといわれます。これはどのようにみるべきでしょうか。
 欧米流通業の研究で知られる法政大学大学院教授・矢作敏行氏は、小売業の海外進出に際し1.市場性、2.タイミング、3.参入方式、4.事業の選択、の適否が重要であると指摘しています。
 その意味では、世界第2位の市場ポテンシャル(1.市場性)と業界再編が進行中(2.タイミング)にある日本は、グローバル企業にとって、海外戦略を進める上で、外すことのできないマーケットといえるのです。そこで、4.事業の選択に目を転じると、改正まちづくり三法の施行以降、郊外での大型店出店ができにくい今後の出店環境を考えると、既存チェーンの買収でもしない限り、インパクトのある業容拡大は難しいのが現状です。また、3.参入方式については、今回のテスコはシートゥーネットワークという「現地企業の買収」によって、一定の業容規模の確保からスタートしたわけですが、これはウォルマートが西友に資本参加した参入パターンと同じです。ただし、買収先が成長性を持ったプラットホームとなり得るかは疑問符がつきます。

テスコ「エクスプレス」とイオン「まいばすけっと」

 こうしたことを考えると、都市部への人口集中もあって、都市部にふさわしいフォーマットとして、テスコは「エクスプレス」という小型店を選択したと考えられます。これは理にかなっているといえます。
 実は先述のイオンも、この春の組織改編により、「戦略的小型店事業」を設置、同社の傘下にあるコンビニ「ミニストップ」、専門店「オリジン弁当」などを統括し、包括的に小型店戦略の見直しを始めました。イオンは昨年から「まいばすけっと」というミニスーパーの実験展開を開始しています。これもアウトパック主体の小分け生鮮品に、惣菜、ベーカリー、自社ブランド「トップバリュ」の食品を60〜80坪の売場に品揃えしたものです。大型店の入り込めない都市部、市街地における足元商圏狙いのフォーマットといえます。テスコ エクスプレスのコンセプトとも合致します。
 「まいばすけっと」は今年5月時点で8店舗出店、店ごとに立地、レイアウトや商品構成に微調整を加えることで実験の幅をじわじわと広げています。
 最近、大型ショッピングセンターの出店ばかりが注目されますが、テスコ、イオンなどグローバル小売業による小型店出店は、むしろ小商圏対応の「小型店」が、これからの”主戦場“で戦うフォーマットにもなることを示唆しているのです。

売場先頭の青果平台では展開アイテムを絞り込み、ボリューム感を出す

テスコ店舗状況
地域 店舗数
英国 1988
チェコ 84
ハンガリー 101
ポーランド 280
アイルランド 95
スロバキア 48
トルコ 30
欧州計(英国を除く) 638
中国 47
タイ 370
韓国 91
マレーシア 19
日本(「つるかめ」含む) 109
アジア計 636
総計 3262
※テスコ ホームページ2006年度資料より
(株)商業界作成

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