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いまこそ、食品スーパーは「食事問題解決業」へ転換しよう
東京都葛西地区「1.5Km圏内20店舗」の戦いにみるストアロイヤルティづくり
オーバーストアが恒常化した今、地域の生活者の“胃袋争奪戦”は
エスカレートするばかり。商圏が狭まる中で、わが店を選んでいただく、
来ていただくために、食品スーパーがとるべき方策は。

文/写真・山本恭広(株)商業界/『食品商業』 編集長

 「半径1.5km圏内に20店舗」
 車で10分も移動すれば、ほぼ回りきれるエリアにこれだけの食品スーパーの数があるとしたらどうでしょう。
 そこで生活する人にとっては、必要に応じて買い分けられる利便性は、たまらない。しかし、営業する店の側からみても、たまらない。徒歩でも車でも「10分圏内」は、コンビニほどではありませんが、週に1、2回足を運ぶ食品スーパーにとって、売上げのベースをつくってくれる「足元商圏」とみてよいでしょう。
 その足元商圏に競合する食品スーパーが20店舗という状況が、都内江戸川区葛西・西葛西地区で起きているのです(上図参照)。
 人口は、2006年時点で約18万人(8万7000世帯)。千葉との県境に接し、旧江戸川と荒川に挟まれた同地区は、営団地下鉄線とJR線が並行して走り、ビジネス拠点である大手町まで15分強という都心アクセスの利便性をもっています。従来の戸建て住宅が立ち並ぶ一方で、東京湾岸に向けての臨海地区では高層団地の建設が進み現在も商圏としての成長をみせる地域です。
 そのためか、1982年には、ダイエー、ジャスコが隣り合わせで同日オープンするなど総合スーパーにとっても、早くから出店が進んだ地域だったのです。

※『食品商業』による調査・作成
 その後、マルエツや東武ストアなど在京チェーンの展開に加え、03年には、埼玉のベルクも東京初出店を行いました。以上に加え、ワイズマート(本部・千葉県浦安市、37店舗)、フジマート(同東京都江戸川区、9店舗)といった近隣を拠点とする地場スーパーも積極的な出店を進め、この豊かな商圏の攻略を図ったのです。
 99年には当時、“東洋一の売場面積”の触れ込みでイトーヨーカドー葛西店がオープン。現在の競合状況ができました。
 そして、競合はこの一両年でさらに過激なものとなりました。ヨーカドーの隣に出店していたホームセンター(島忠ホームズ)が売場一部を改装、回転の鈍い家具やインテリア、エクステリアなどの分野を縮小、代わりにしまむらやハニーズを誘致し、実用衣料を導入しました。そして、オーケー(本部・東京都大田区、47店舗)を入れることで食品導入も行ったのです。ご存じのように、オーケーは競合店に後れをとらない徹底した価格合わせとチラシを打たないEDLP(エブリデーロープライス)政策で知られる個性的なディスカウント企業です。東京西部から神奈川にかけて展開していましたが、今回の葛西店で、湾岸地区へは初出店となりました。
 さらに、ジャスコと同時オープンしたダイエーも店舗リストラの一環で閉鎖したのですが、その跡地には、卵1パック1円、NBマヨネーズ58円などの激安商法で知られるマルエイ(本部・千葉県市原市、10店舗)が出店したのです。旧来型の箱型GMSともいえる建物1階部分にはマルエイ、かつての衣料品フロアと思われる2階部分にはしまむら3フォーマット(しまむら、アベイル、バースデー)を導入するなど、“衣・食における低価格商業集積”が形成されることになりました。片や正統派を志向するEDLP企業、もう一方は典型的なゲリラ商法とタイプは異なりますが、共に食品だけで、年商30〜40億円級。低価格を武器とした新興勢力の襲来により、ヨーカドー、ジャスコなどかつての総合スーパー店舗は足元を脅かされることになったのです。

イトーヨーカドー葛西店。1999年にオープンした。スポーツ専門店やアミューズメント施設などを備え、地域だけでなく国内最大級のSC規模を誇った

ワイズマート西葛西店。2層型という変則店舗ながら、値段を抑えた価格と鮮度を武器に、足元商圏を抑える

ダイエー跡に出展したマルエイ。東京への初出店となる西葛西店で地域の価格戦の先頭を走る

島忠ホームズ内にしまむらとともに出店したオーケー。EDLPを武器に総合店を脅かす存在

 こうしたことで、食品スーパーに加え、総合スーパー(食品フロア)、さらに先述の新興勢力群によって、「密着戦」の様相となってきたのです。地域の人口は約18万人に対し、食品スーパー20店舗。単純に割ると1店舗当たり1万を切る商圏人口ですが、SHOP99などの生鮮コンビニや従来の生鮮業種店なども加えると、さらに商圏人口は絞られます。

店舗間競争は商圏内寡占化が鉄則

 総合スーパーのもつ「広域」からの集客力は、同業他業態からの競合店によって削り取られ、「総合」のもつ品揃えの強さも、食品、衣料はじめ専門性の強い競争相手に食い取られるようになりました。イオン、セブン&アイもグループ総体では4兆円超の売上げ規模を誇る世界クラスの企業であり、最近の流通再編において、まさに2強といわれる状況をつくっていますが、こと単店レベルでは、激戦エリアの中では苦戦を強いられています。とりわけ「総合スーパー」フォーマットでは “過剰”ともいえる広い売場面積が、平日の売上げ効率維持に腐心することになります。先のオーケー、マルエイだけでなく、同地で先行営業していたフジマート、ワイズマートといった地場スーパーも住宅街・繁華街立地という商圏に恵まれているにせよ、競合に離されない程度に価格を合わせつつ、小容量仕様を強化したきめ細かな商品化などによって、地域客の支持を集め、存在感を出しています。
 商業統計によると、いま国内の商業売上高は135兆円といわれます。うち食品売上高は農水省推計によると45兆円前後とされています。先の2強は、衣料、住居関連を加えた総合売上げでみても、1割に届くかどうかなのです。実は、日本はいまだ“(再編中ながら)中小規模の企業が林立している”状態といえるのです。とりわけ、生鮮、日配などの分野で、地域性や嗜好(しこう)の多彩さを残すわが国では地域スーパーチェーンが強い理由もここにあります。
 現行の国内市場では、「寡占化」という状況はつくりにくい。ただし、小売業、とりわけ、食品スーパーの世界では、“(一定の範囲=地域において)圧倒的な寡占状況”をつくることが必要ではないでしょうか。

いまこそ「食事問題解決業」への突き詰めが必要

 ー小さな町には大きくつくれ。大きな町には小さくつくれー
 これはフランスの学者ルネ・ユーリック氏が言った言葉です。故川崎進一東洋大学名誉教授が紹介して、日本で知られるようになりました。ここでいう町の大小とは地勢上というよりも人口密度や市場的なポテンシャルと考えてよいでしょう。
 ローカル地域には、巨大ショッピングセンターやスーパーセンターのような衣食住(+サービス)フルライン店舗のほうが、利便性が高く、競争上も有効なのですが、都市部のような人口密度が高い地域では、お客による目的に応じた店の使い分けが進むため、専門性を強めた“一点突破型”の店が強さを発揮するのです。
 「食事」という一人当たり年に1000回以上を数える、欠くことのできないマーケットを狙って、各フォーマットがしのぎを削っています。「家庭内食提供業」として成長してきた食品スーパーも、中食産業の隆盛やミールソリューションに象徴される「買い物」「調理」への利便性追求のため、売場と商品の見直しが迫られています。
 家庭での食事は「買う」「つくる」「食べる」から構成されます。食品スーパーは以上の3段階においての問題解決業なのです。「買う」は品揃えや売場構成、そして価格の問題、「つくる」は惣菜や簡便商材の強化、「食べる」は商品の品質、が問題解決の対象となります。大型店と価格強化型店舗の対峙により、「密着戦」の様相が出てきた葛西地区では、改めて、「食事問題解決業」としての突き詰めが迫られているのです。


葛西地区主要店舗概要
店舗名 住所 売場面積 開店日
1
イトーヨーカドー葛西店
(葛西リバーサイドモール内)
江戸川区東葛西9-3-3 5,033坪 1999.7.3
2
ジャスコ葛西店 江戸川区西葛西3-9-19 約4,000坪(非食品含む) 1982.11.30
3
マルエツ西葛西店 江戸川区西葛西6-16-8 643坪 1979.12.11
4
オーケー葛西店
(島忠ホームズ内)
江戸川区東葛西9-3-6 2006.7.31
5
つるかめランド西葛西店 江戸川区西葛西6-17-1 232坪 1989.1.8
6
マルエイ西葛西店
(サニーモール内)
江戸川区西葛西4-2-28 2006.12.9
7
ワイズマート西葛西店 江戸川区西葛西3-16-15 1979.11※2004.7.6改装
8
フジマート西葛西店 江戸川区西葛西3-22-25 約100坪
※『日本スーパー名鑑2007』(商業界)及び『食品商業』編集部調査にて作成

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