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「コンビニエンス」から「健康」へと 変わった!? 食マーケット
食品スーパー 2007年の商品戦略食に求められる要素は「簡便性」から「健康志向」へ。
高齢化を迎えたニッポンの食品流通業界で、規模を超えた戦いが始まろうとしています。

文/写真・山本恭広(株)商業界/『食品商業』 編集長

 右下の数値は何を意味するのでしょうか。
 これは食に関する志向や重視する項目がどのように推移したかを地域別に見たものです。
 2006年10月22日から26日の5日間、フランスでパリ国際食品見本市「SIAL」(シアル)が行われました。グローバルフードマーケットプレースともいわれる食品展示会は、毎偶数年に開催されるもので、今回が22回目の開催です。毎回、世界90カ国以上、約5000の出展社を集め、バイヤー、商品開発担当者などの来場者は120カ国13万人を数えます。規模は違いますが、日本でいえば、「フーデックス(国際食品・飲料展)」(主催:日本能率協会ほか)「スーパーマーケット・トレードショー」(同日本セルフ・サービス協会)に相当するものです。
 シアルはドイツ・ケルンの「アヌーガ」(毎奇数年開催)、アメリカ・シカゴの「FMI」(毎年開催)と並び、世界最大級の食品見本市といえるだけに、単なる新製品の紹介や商談の場ではなく、食の世界におけるさまざまな潮流や革新の姿の発信地として、毎回、「食品商業」編集部でも取材を行っています。
 冒頭の数値は、シアルで発表された調査データの一部です。世界各地域の消費者に、「食に関して重視する項目」を選んでもらったもので、「Sophisticate」(洗練さ)、「Variety」(多様性)、「Naturality」(天然・素材重視志向)など、食に関する項目の中でも数値の増減が著しかったものです。
 アメリカ、カナダを擁する北米、フランス、イタリアなどの欧州、そして日本を含むアジアの各地域では、文字通り「扱いやすさ、携帯性」を示し、「簡便性」または「コンビニエンス」を意味する「Easy to handle」は、04年の段階では、各地域で2けた以上の比率を占めるほど高い優先順位をつけていましたが、05年では軒並み低下しています。代わって、「Medical」(直訳すると「医療」となる)が上昇しています。これは「身体によい」「身体に効く」と解釈してもよいでしょう。



 もちろん、食に求められる簡便性が後退したとも思えません。高齢化が進行したわが国では、「商品の扱いやすさ(開封や調理のしやすさなど)」はますます商品開発上、不可欠な項目となるはずです。むしろ、簡便性は一定のレベルまで達しており、消費者の関心が、「(食を通じた)健康」へと広がったものと私は見ています。
 最近の動きを見ても、05年に施行された「食育基本法」をきっかけに、食品スーパー各社でも食育をテーマにした売場づくりやプロモーション活動が目立つようになりました。子供に“望ましい食習慣を身に付けてもらおう”というだけでなく、生活習慣病の危険がある成人の食生活改善をも促すことが基本法の主旨です。また、06年5月に運用開始された(食品衛生法の改正による)ポジティブリスト制度は、無登録の農薬の検出や残留農薬への不安が背景にありましたが、同時に「有機」「低農薬」といった冠のついた農産物への関心が高まりました。そのほか、健康やダイエットに効くとされる食材への需要が急激に高まるような「○○ブーム」も相次いでいます。食はドメスティックなものですが、先の先進各国で高まっている「Medical」ニーズは、わが国の食のトレンドとも通じるものがあります。

サミット保木間店では特定保健用食品など「健康」で括ったコーナーを展開する

CFSコーポレーションのキミサワ御殿場便船塚店では「健康」をテーマにしたコーナーを設置している

「健康」対応の売場づくりが 始まる食品スーパー

 食品が口に入るものである以上、“おいしく”“安全”であり、“健康によい”ことが求められるのは当たり前のことなのです。
 しかし、こうした「健康」志向をわかりやすく売場で表現することも必要です。食品スーパーをはじめ食品小売りの現場ではどのように取り組まれているのでしょうか。
 昨年オープンした店の中には、「健康」を意識した売場を目玉とした店が見られました。
 サミットが06年7月に足立区にオープンさせた保木間(ほぎま)店では、有機栽培・特別栽培農産物を集めた「健康農園」コーナーの導入を行いました。また、惣菜売場では主菜、副菜に揚げ物、フライを盛り込まない弁当の品ぞろえや、アイテムごとにカロリーや成分表示のPOPをつけるなど「健康」志向を意識したインプロを行っています。そして特定保健用食品などを集合陳列させたゴンドラを取り込むなど、店全体で「健康」をアピールした売場づくりを行っています。
 さらに踏み込んだのが、静岡に拠点を置くCFSコーポレーションが06年9月にオープンさせたキミサワ御殿場便船塚店の売場です。05年より、“医・食・心同源”を企業方針に掲げた同社は、中核事業のドラッグストアだけでなく、食品スーパーにおいても、売場を通じて「健康維持増進」のコンセプトを発信することにしたのです。そのコンセプトを具体化させた1号店が御殿場便船塚店です。ゴンドラごとに「体脂肪」「疲労回復」「血糖」といったテーマを持たせ、「体脂肪」のゴンドラには、カロリーゼロの甘味料や高い燃焼効果が期待される飲料を配置、「疲労回復」のゴンドラでは、クエン酸やぶどう糖を豊富に含んだジャム類や煮干などを配置しています。また、管理栄養士を常駐させた「健康相談コーナー」を設置しました。備え付けの血圧計、体脂肪計、骨密度計でのセルフチェックや、管理栄養士による健康相談には1日当たり20〜30人が訪れるといいます。これはまさにドラッグストアを母体とする同社ならではの取り組みといえるでしょう。
 以上のような「健康」だけを切り口にすると、各社の動きが販売上の効率にどの程度結びついているかは測り難く、手探りの部分もあるかもしれません。
 しかし、“安くたらふくから”“おいしいものを少しずつ”そして“身体によい”へと食品スーパーに求められるニーズは移ってきました。いや、積み重なったといってもよいでしょう。こうしたニーズを率直に理解し、対応を着実に進めることが必要です。これは企業規模を超えた食品スーパーにとって共通のマーケティング課題なのですから。


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