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ほころびはじめた「ローカルチェーン天国」
M&A時代、食品スーパーのとるべき選択肢
「ベルクよ お前もか」こんな言葉がスーパーマーケット(SM)各社のトップから聞こえてきそうです。
7月31日、イオンとベルクの業務提携が発表されました。05年度年商1兆8929億円、店舗数378店(単体)を有する国内トップ企業と年商800億円、50店足らずの地方SMの提携ですが、地方SM企業に与えた影響は小さくありません。

文/写真・山本恭広 (株)商業界/『食品商業』 編集長

  ナショナルチェーン、リージョナルチェーンが旺盛な新規出店を続ける一方で、業容拡大、国内マーケットシェアを高めるために、「合併、買収により他の企業の経営権を取得する」という「M&A」が企業規模拡大の有力な選択肢として、活発化しています。
 図表1は国内のM&A件数の推移です。
 M&A仲介の大手であるレコフ社によると、1995年には年間約500件だったM&Aの取引件数が、2005年には約2700件と5倍増となっています。
 背景には企業が「(事業の)選択と集中」を掲げ、経営資源をコア事業に集中させ、ノンコア(不採算・不得意)事業からの撤退を行ったことがあります。このことが事業会社の売買を活発化させました。
 SMの世界でいえば、今年の3月から8月にかけて、食品スーパーに関連しただけでもこれだけの事例が出てきています(図表2)。このほかに個別店舗の売却や譲渡例を含めると、再編の動きは日常的に起きているといえます。
 M&Aのケースとしては、1.民事再生法申請企業に対し、大手企業がスポンサーになる、2.投資ファンドの資本参加による再建支援、3.持ち株会社を軸にした経営統合、の3つが一般的です。「大手企業」とはチェーンや商社である例が目立ちます。
 また3つのケースのほか、「産業再生機構による支援」や「大手企業による地方企業の子会社化」が行われています。ダイエーの産業再生機構による支援決定から丸紅がスポンサーになるまでの経過は前者の例といえます。セブン&アイによるヨークベニマルの完全子会社化(9月1日付け)は3.に相当するものですが、後者の「大手企業による?」の例ともいえます。

緩やかな連携で首都圏SMの形成を図るイオン

 M&Aは、従来イオンが業容拡大に向けて、とってきた施策です。
 ジャスコという総合スーパーフォーマットと並ぶ食品フォーマットの柱として、同社は「マックスバリュ」というSMを位置づけています。直轄だけでなく、北海道、東北、東海、西日本といったように地域法人のマックスバリュ各社が中心となって、500〜700坪の大型SMを展開させており、05年度の段階で約450店、8000億円の規模となっています。商物流の統合などスケールメリットの追求には余地を残していますが、店舗名ブランドだけをとるならば、“国内最大のSMチェーン”といえます。

首都圏SMとの連携を強めるイオン


図1 日本におけるM&A件数の推移

出典:レコフ(『食品商業』8月号より)

イオンとの提携で商品調達力強化に動くベルク

 ただし首都圏を見ると、ドミナント形成が進んでいるとは言い難く、03年にはカスミとの業務提携、それ以前からはいなげやと、ある意味“緩やかな”連携を築いています。そこにベルクが加わることは、“首都圏SM連合”に厚みが増すことになります。
 ローカルチェーン側であるベルクにとってはどう見るべきでしょうか。
 同社は500〜700坪の店舗フォーマットを確立し、作業システムの標準化に取り組んできました。その結果、安定して毎年4%台の営業利益率、10%以上の総資本対経常利益率(ROI)を弾くなど優良チェーンとして高い評価を得ていました。
 ただし、激戦地埼玉を拠点とするだけあって、ここ2、3年見せた収益性低下の兆候は、同社の既存店が激しい競争にさらされていることを示すものでした。06年2月期の営業利益率3.6%、ROI8%は最近の中では最も低いものでした(それでもSM業界の中では高水準ですが)。
 イオンとの提携メリットとして挙げた、1.商品供給(トップバリュなどのPB、NBの共同調達)、2.販促施策、3.店舗開発情報の“共有化”は、ベルクにとって経営基盤を固める上での大きな支えとして期待されるでしょう。


「ローカル天国」の終焉

 米国の食品流通の業界団体であるFMIによると「食品スーパー」(スーパーセンター、フード&ドラッグ含む)市場は約54兆円(05年度)。うちアルバートソン、クローガー、セーフウェーなど上位10社のシェアは約50%。ウオルマートのスーパーセンターによる食品販売やバラエティストアの台頭もあって、シェアを落としつつありますが、寡占化率は高いといえます。同じく流通先進国である英国でも、テスコが25%、続くセインズベリー、アズダウオルマートがともに10%台半ばのシェアを持ち、上位企業による寡占化率が高くなっています。対して、日本は最上位のイオンでさえ、衣料、食品、住関連合わせた連結で4兆円強。約50兆円といわれる国内食品小売市場規模に対して1割にも満たないのです。
 米国の場合、グロサリー主力であることもあって、大量生産・大量販売のサイクルが効果を発揮してきました。また、このことが食品スーパーの世界でも統合再編を促してきました。
 一方、日本の食品スーパーの世界では、地域性の強い生鮮や日配品が主力であり、これらは大量生産・大量販売サイクルに乗りにくいものです。このことが、食品スーパーにおける地方企業、単独系企業の存在を支えてきたといえます。
 日本の食品スーパーは「ローカル天国」の住人でもあったのです。
 しかし、この状況にも変化が見えてきました。
 一つには「後継者問題」?これは小売業共通の問題です。とりわけ、食品スーパーの場合、創業者自身が店舗、商品づくりに深く関わり、圧倒的な実務経験と知識の積み重ねの上で業容を築いた歴史を持ちます。これらすべての企業が後継者育成に成功しているとは限りません。企業存続を図る上で、経営層における人材支援を外部に求めるのも理解できます。
 今年、ライフコーポレーションの社長に就いた岩崎高治氏は三菱商事の出身ですが、さかのぼって92年に結んだ同社との提携とも併せて、ライフの創業者である清水信次氏が選択した後継者対策の一つといえます。
 ローカル天国を崩壊させる第二の要因が「競争激化」です。
 商業統計によると、食品スーパーの数は1万7000店(売上高16兆円)。1店当たりの人口は7000人、世帯数にして2000世帯です。地域にもよりますが、このマーケット規模は一般的な食品スーパーの「一次商圏」、つまり自動車、自転車、徒歩を問わず5〜10分圏内で来店できる地域に相当するもので、「足元商圏」と呼ばれるくらい、その店の収益の根幹となるものです。計算上は、1店当たり一次商圏分のマーケットしか確保されていないことになります。これに「総合スーパー」の食品フロア、「コンビニ」「専門店」が加わると、さらに数値上のマーケットは縮むことになります。
 実際、営業効率にも表れており、03年には400万円以上だった「坪効率」が05年には300万円を割り込む、という統計も出ています。
 このように、競争に伴う一品単価の減少と相まって収益性を圧迫したことがSMをさらに追い詰めました。
 この中で、主力の生鮮食品のレベルを維持しつつ、グロサリー商材の収益性を確保するためには“マス”の確保が欠かせなくなりました。日本の流通業の場合、「資本、経営面での独立性を保ちつつ、商品面での大同団結を進める」の大儀のもと、仕入れ共同体やコーポラティブチェーンが形成されてきた歴史があります。
 ベルクも日本最大のコーポラティブチェーンに加盟していたのですが、今回の提携を見る限り、共同仕入れにおける質量両面のレベルアップが求められることを示します。
大手の資本を背景につけるか、インディペンデントで生き抜くか。M&A時代はローカルSMに選択の時を迫っているのです。

図2 2006年国内企業M&Aに関する動向(8月まで)
2006/3/1 セブン&アイ・ホールディングスがヨークベニマルの主要株主となる。同日、イトーヨーカ堂がセブン&アイに吸収合併されることに伴う、主要株主の異動。
2006/3/1 ヨークベニマルが、連結子会社のみどりやスーパー(3店舗)を吸収合併する。ヨークベニマルが存続会社となり、みどりやスーパーは解散。
2006/3/20 イオンは、オリジン東秀の株式95.67%を取得、連結子会社化。
2006/4/1 原信とナルスは、共同で持ち株会社体制への移行による経営統合を行う。原信は会社分割により、原信ナルスホールディングス株式会社に商号を変更し、新設される(新)株式会社原信が同社の営業をすべて承継。(新)原信とナルスは、原信ナルスホールディングスの完全子会社となる。
2006/4/5 イオン株式会社は、SCの賃貸および管理運営を行う株式会社ダイヤモンドシティの普通株式の公開買付けを開始。所有割合を27.39%から60.11%に引き上げる予定。ディベロッパー事業の強化が目的。
2006/4中 ニプロ株式会社は100%子会社のニッショーの発行済み株式のすべてを株式会社阪急百貨店に譲渡。
2006/4/24 イオンは、サンデーホームセンターが第三者割当増資により発行する普通株式を引き受け、出資比率を50.1%とし、同社を連結子会社とする。既存店舗も含めた東北エリアのイオンSuCのハード部門への参画を段階的に拡大する。
2006/5 バローは、オカノ(食品スーパー4店舗)の主要な株主より同社株式を取得、子会社化。
2006/5/1 マックスバリュ中部は、ナフコはせ川(スーパーマーケット21店舗)の発行済みの全株式を取得、子会社とする。ナフコはせ川は、名古屋地盤のボランタリーチェーン「ナフコチェーン」の中核企業。
2006/7/28 丸紅が(株)産業再生機構より(株)ダイエーの議決権付後配株式を取得。
2006/8/15 第三者割当増資によりイオンがベルク株の10%取得。
『食品商業』編集部作成

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