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大型店出店規制が「食品スーパー」バトルを激化させる
「まちづくり三法」改正で変わる競争環境
5月末、「まちづくり三法」改正法案が可決しました。
郊外大型店の出店を事実上、規制する内容を含み、「自由競争の原則をねじまげた悪法」とまでいわれる
改正法の施行により、食品スーパーを取り巻く競争環境と出店の方向はどう変質していくのでしょうか。

文/写真・山本恭広 (株)商業界/『食品商業』 編集長

 まちづくり三法の一つである「都市計画法」の改正法案が5月24日、参院本会議を通過し、成立となりました。同月31日には「改正中心市街地活性化法」も成立し、来年秋以降の実施が現実のものとなってきました(大規模店舗立地法の改正法案提出は見送られた)。
 今回の改正の目的は、中心市街地に都市機能を集約させ、商店街の活性化を促すことにあります。改正中心市街地活性化法には、商業機能の回復をアシストする各種支援策も盛り込まれますが、重要なのは都市計画法の改正にあります。改正法では、延べ床面積1万m2を超える大型店の出店を「商業地域」「近隣商業地域」「準工業地域」の3地域に限定、現行法では規制のなかった「第二種住居地域」「準住居地域」「工業地域」への出店が原則不可になります。デベロッパーなど開発業者による用途地域の変更や緩和を求める提案を受け入れる制度を盛り込んではいるものの、事実上の郊外出店規制になるわけです。
 まちづくり三法については、2000年の現行法施行から現在まで、“出店自由”の中で各社の出店スピードのアップを後押しし、結果として、オーバーストアの現状を生み出してきました。しかし、今年度の見直し時期を前に、大型店出店規制の動きは自治体ベースで動いていました。昨年秋、先に福島県で可決され、郊外大型店の出店を事実上“規制”したものとされる「まちづくり条例」もその一つ。同条例は6000m2以上の店舗を規制するというかなり厳しいもので、同地域に展開を図るチェーンストアにとっては致命的な内容でした。この条例がつくられた背景には、商店街に代表される中心市街地の空洞化、高齢者の買い物環境の劣化への危機感があります。チェーンストアの側では、まちづくり三法の見直しを控えていることもあって、他の自治体への波及に警戒感を強めていました。
 もちろん、市町村はじめ自治体の“見識ある”リーダーシップでよりよい商業施設がつくられること自体は、「まちづくり」の名においても望ましいことではあります。
 ただし、出店者側にすると、開発物件が制限されることにより、限られた立地を取り合うことで、需給バランスが崩れ、開発コストの上昇を招きかねない。また、「まちづくり」の観点からの商業施設開発は、各自治体による都市計画やインフラ整備と足並みをそろえる上で、交渉や調整に伴う時間とコストがかさむ要因になります。これらのデベロッパーコストは結果として、テナントである出店企業にも転嫁されることになります。

スーパーマーケット各社の対応はどうなる

 法案通過に先立つ5月中旬、参議院経済産業委員会において、参考人として出席した佐々木孝治氏(日本チェーンストア協会会長・ユニー社長)は「中心市街地が衰退した背景を考えるべき。郊外出店を規制しても市街地の回復にはならない」と述べました。チェーンストア業界全体の声としての表明だけではなく、総店舗面積だけで、1万5000m2クラスの総合スーパー「アピタ」を主力とする同社にとっても、改正後の出店に大きな制限が加わることになるわけです。
 では、実施された場合、各社の対応はどうなのか。『食品商業』では、法改正に先立ち、大規模商業施設にとり、中心市街地は出店地域となりうるのか、またそのための条件は何か、そして、出店地域における競争環境の変化と今後の出店フォーマットの見直しは、について聞いてみました。
 茨城に拠点をおくカスミは、地域の車利用依存度を踏まえ、カーショッピングに対応した中心市街地のインフラ整備や出店・居住促進策などが、自治体側で用意される必要があるとしています。一方で、市街地における既存店はスクラップ&ビルドや改装などで商業機能の確保に尽くすとしています。実際、新規出店に制限がかかる場合、同社に限らず、本来ならば閉鎖対象にすると思われる既存店への再投資による機能回復を図る、という動きが出ています。
来年秋以降実施の、「まちづくり三法」改正法で大型SCの出店計画に見直しが迫られる(写真と本文は関係ありません)

1万m2以内の商業施設として、食品スーパーを核としたNSCの増加が予想される。

「生鮮コンビニ」が都心部で増えている(写真はサークルKサンクスによる「99イチバ」)。

 オークワ(和歌山)は、展開店舗の大半が対象規模1万m2以下の食品SMでありますが、現在、出店を進めているスーパーセンター展開には影響が出ると明言しています。
 また、「PLANT」名で4000〜5000坪のスーパーセンター出店を行っているPLANT(本部・福井)は、「駐車施設などのインフラ整備をせずして、中心市街地への強制的な集積推進は本来の目的である活性化効果が得られるか疑問」としながらも、規制の枠内での業態開発や変更を示唆しています。

「1万m2以下」のNSC、小型店舗が急増する!?

 これらに共通するのは、総合スーパーにとってはもちろんのこと、スーパーセンター開発など大型店舗開発に動いたSMチェーンにも店舗戦略の見直しを迫ったということ。
 また注意しておかねばならないのは、SMチェーンだけでなく、SCを主力としてきた総合スーパー企業も、1万m2以下の店舗モデル開発に動き始めるということです。規模をコンパクトにした商業施設の出店競争は結果として、商圏設定を絞り込む、すなわち小商圏店間の競争が激しくなることが予想されます。
 大型店が規制されるのならば、対象外となる規模の中で、中心市街地のマーケット掘り起こしとなるフォーマットの開発へと動くのが当然。
 大店立地法が施行された2000年以降、SCをはじめとする大型店の大量出店で、自由競争の利点を最大限に活かしてきた、また今回の改正法で最も影響を受けるとされるイオンも、岡田元也社長は記者会見のたびに、法規制の不当性と矛盾を挙げつつ、「(施行前の駆け込み出店の声もあるが)はき違えている。経営計画の遂行が大事」としています。
 ただし、同グループはSMフォーマットの「マックスバリュ」を全国に約450店舗展開しており、このタイプを軸としたNSC開発を加速化させることになりそうです。また、小型店の実験として、「まいばすけっと」という小型スーパーの機能を持たせた店舗の実験も始めています。昨年末、横浜市内の住宅立地に出店、以降、近隣に2号店を開設し、ドミナント化としての可能性も追求しています。
 特に、“生鮮コンビニ”ともいえるこのタイプの店は、物件の制約から今後の新規出店が厳しい都心部では増加を見せています。半径300m圏内、徒歩10分圏内に食品スーパーがない「過疎地域」があるといわれている都心部のマーケット開拓を図り、05年には、ローソンが「STORE 100」、今年に入ってサークルKサンクスが「99イチバ」などの生鮮強化型コンビニを展開しました。そして、「SHOP99」の急速出店で500店舗の業容を築いた九九プラスも都市部の既存小型物件を活用しつつ、「食品スーパー過疎地域」を突いた新興勢力ともいえるのです。郊外出店が規制され、都市中心部への出店にシフトするとするならば、このようにコンビニでもなく、従来型のミニスーパーでもない、現代の消費にマッチさせた新たな店舗による食マーケット参入もマークしておく必要があります。
 デベロッパーはどう対応するのでしょうか。現在、全国50ヵ所以上に商業施設を展開、特にスーパーマーケット(SM)を核店舗としたネバーフッドショッピングセンター(NSC)は全体の7割以上を占めていますが、いずれも延べ床面積1万m2以下となり、この部分の規模やフォーマット見直しはないようです。ところが、家電、ホームファッションなどの大型専門店舗を集積させたコミュニティSCとなると開発の規制を受けることになります。これによって、1万m2を上限にしたフォーマット開発に進むことになりそうです。
 今回の改正法も今後また見直されるわけで、短期的に出店規模を狭小化させることは、中長期的に店舗の競争力を落とすことになります。当面は制限内で確保できる最適フォーマットへの注力、すなわちNSCの形に収れんされていくとみてよいでしょう。
 SCによる店揃えの利便性が持つ競争力、そして“コンビニ並み”の利便性を持つ小型店の双方をにらんだ戦いが食品スーパーを迎えることになります。

図1 都市計画法改正後の規制(一部)
用 途 地 域 改 正 前 改 正 後
低層住居専用地域 50m2超(第一種)〜150m2超(第二種)不可 変更なし
中高層住居専用地域 500m2超(第一種)〜1500m2超(第二種)不可
住居地域 3000m2超不可
第二種/準住居地域 制限なし 延べ床面積1万m2超の店舗は原則不可
(用途地域の変更、緩和の地区計画決定があれば出店可)
工業地域
商業地域(近隣含む) 制限なし 変更なし
準工業地域
工業専用地域 地区計画決定が必要
市街化調整区域 原則不可
(病院など計画的大規模施設は可)
原則不可
(地区計画を定めた場合、適合施設は可)

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