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シニア大活躍! 高齢社会の「働き方」「働かせ方」
4月1日、「改正高年齢者雇用安定法」が施行されました。同法の施行により、60歳定年制が廃止され、シルバー世代の活躍の場が増えることになるわけです。前回、本欄では高齢社会におけるスーパーマーケットの店づくり、売場づくりのあり方について述べました。今回の法改正では、高齢者を販売の対象としてだけでなく、重要な戦力としても位置づけなければならない時代であることを教えてくれます。
文/写真・山本恭広(株)商業界/『食品商業』 編集長

??(従業員の)58.9%の人が60歳以降も働くことを希望??
 これはスーパーマーケットの業界団体が従業員向けに行ったアンケート調査の結果です。
 今年4月1日、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)が一部改正されました。世界先進国の中でも類をみないスピードで進行するわが国の高齢化。昨年の段階では既に人口の減少も明らかになり、労働力人口の減少が危惧されています。
 併せて、老齢厚生年金の支給年齢の引き上げもあって、「働かせる側」「働く側」双方に高年齢者の戦力化を急がなければならない環境にあるといえます。
 いわゆるシルバー層の雇用については、1986年に施行された改正高年齢者雇用安定法がきっかけになります。この段階で60歳定年に向けた道筋が敷かれたもので、当時の主流であった55歳定年制に対して、60歳定年の導入を「努力義務」としたものです。その後、90年に定年到達者に対して、「再雇用努力義務」、94年には「(定年が)60歳を下回ることができない」こと、2000年には「定年の引き上げ、または継続雇用制度の導入、改善の努力義務」へ改められたという経過があります。
 今回の改正法では、定年制をとる場合は60歳を下回ることができないこと(法定定年年齢60歳は維持)を前提に(1)65歳までの定年年齢の引き上げ(2)65歳までの継続雇用制度の導入(3)定年制の廃止、と3つのいずれかの雇用確保措置が義務づけられています。06年4月1日から07年3月末までは62歳まで、10年3月末までは63歳まで、といったように、13年4月1日の完全施行に至るまで、段階的な経過期間は設けられます。

チェーンストアのシニア活用制度の状況

 図表1は主要チェーンストアにおける高年齢者の再雇用制度の導入状況です。同法の適用を直近に控えた55歳以上の社員比率が10%を超えているのは11社中4社。製造業や運輸・通信業などに比べ、流通業は比較的若いといわれることもあってか、定年年齢者が急増する「2007年問題」にはいま少し間がありそうですが、決して無関係ではないのです。
 各社とも60歳定年、雇用確保措置としては「再雇用制度」、雇用形態としては「嘱託社員」を採用しています。「嘱託」というのは法律上の明確な定めはなく、いずれも65歳までを想定した有期雇用契約と考えてよいでしょう。
 各社共通しているのが、高齢者に求める能力として、専門知識、技術など“長年の実戦経験”でしか培えないキャリアを踏まえたものとしての店舗勤務があるようです。
 55歳以上社員構成比率が24%と際立って高くなっているライフコーポレーションのように、「年金受給年齢までのつなぎ雇用といった受け身での対応ではなく、期待される戦力として位置づけ、2005年11月から実施している」例もあります。また、イオン本体は再雇用制度をパートタイマーまで広げていますし、グループのスーパーマーケット企業であるマックスバリュ西日本(兵庫)、マックスバリュ東海(静岡)なども同様に昨年11月から施行に先駆けて導入しています。
 マックスバリュ西日本では、正社員、パートタイマー(同社ではフレックスと呼称)社員を65歳まで継続雇用する制度を導入していますが、これは全従業員を「嘱託社員」「エキスパート」「シニアアルバイト」の3つに分類し、職務と契約内容を設定したものです。「嘱託社員」であれば、定年時に専門性の高い職に就いていた人を対象に引き続き活躍してもらおうというもの。店舗開発など長年の人脈形成がものをいう幹部職の職務が対象になります。「エキスパート」では、店長、副店長、チーフなど管理・監督者としての能力を活かした働き方が想定される仕組みです。

ローカル企業のシニア活用の実状

 地方企業ではどうでしょうか。
 図表2は地方チェーンの団体である社団法人全国スーパーマーケット協会が行った「高齢者雇用実態調査」です。協会加盟企業中心に全国の地方チェーン167社の回答を得たものです。企業側が定年年齢到達者を雇用する理由、つまり求める知識・能力として、「商品等に関する広範な知識」「専門的な知識」「専門的な技術」などが6割以上を占めています。この調査では、企業側だけでなく、従業員側への「従業員調査」も行っており、冒頭の言葉は従業員側の就業継続への意欲についての意識を聞いたものです。「定年後の働き場所」として想定しているのが、店舗一般勤務で「夜間要員」、「日配担当」の順となっています。長年培ったスキルを存分に発揮するというよりも、むしろ補完的な役割に徹しようという“控えめな”声が出ています。「水産部門」はじめ生鮮各部門でのスキルの発揮を期待する企業側とのギャップが出ています。
 高年齢者ともなると能力、スキルだけでなく、体力、労働観等の個人差もあります。
買い物客としてだけでなく、戦力としてもシニア世代を位置づけたい。

鮮魚を中心とした生鮮売場では、シニア世代のキャリアとスキルが期待されている。

 また、今は60歳を超えても、スキルはもちろん、体力ともひけをとらない方も多くいます。ハードとされる生鮮加工においても、若手従業員のインストラクター役として、特に生鮮部門での技術の確立と定着を図る上で高齢者が重要な位置を占めている企業もあります。
 広島のフレスタのように、3年前から、正社員の雇用延長に取り組んでいる例もありますが、同社の場合、定年を迎える正社員が増え始めた社内の事情もあってか、競争力の中心である鮮魚、精肉など生鮮部門での技術力維持を目的に、契約社員としての雇用延長を進めてきたものです。正式な制度化は今年の4月からとなりますが、特に重視しているのが、定年者個々の“ライフプランづくり”としています。人事部が中心となり、対象となる人の能力やスキルだけでなく、定年後の生活環境に沿った勤務形態や条件など生活設計に踏み込んで、「働き方」を話し合うというもの。長年「事務職」に携わり、企業側が求める「生鮮技術」の形成機会に恵まれなかった対象者が出ることも想定し、55歳から「準備期間」として、60歳以降に向けたトレーニングプログラムの作成も進んでいるといいます。
 こうしてみると、高齢社会において、望ましい「働き方働かせ方」を実現するには、企業にとって、「採用」「定着」から、今回の制度に伴う「再雇用」に至るまで、長い目で見たキャリアプランの構築が必要であることがわかります。特に売場づくり、商品づくりから提供に至るまで、人的側面に負うところが大きい食品スーパーでは、現行の従業員にどのようなスキル、能力を積み重ねて、高齢を迎えてもらうか。これは「働く側」も見据える必要がありそうです。その意味で、今回の法改正は、小売業に携わる者にとって、準備期間が始まったと見たほうがよさそうです。
※掲載の写真は本文とは関係ありません。

表1 主要チェーンストアの「シニア」再雇用制度導入状況
企業名
定年年齢
雇用確保措置
雇用形態の区分種類
雇用制度の種類
高齢者に求める
知識・能力
高齢者活用において
配慮する点
イオン(株) 60歳 再雇用制度 定年退職嘱託社員 再雇用制度 60歳までに培った知識・能力を継続してもらうこととその伝承 再雇用前の教育体制、面談による個人の希望の確認
(株)イトーヨーカ堂
60歳 再雇用制度 嘱託社員 再雇用制度 販売業務における接客力、生産技術など キャリア研修制度の充実
ユニー(株) 60歳 キャリア社員制度(公的年金支給開始年齢まで継続雇用) 嘱託社員 再雇用制度 専門経験・技能 役割責任の明確化と各所の整合性、健康維持
(株)ライフコーポレーション 60歳 再雇用制度
65歳上限
パートタイマー 65歳を上限にした再雇用制度(社員、パートタイマーにも適用) 長年のキャリアを生かした実務知識、技能の発揮・知識、技能を生の伝承 多様な勤務形態の認定(勤務時間、出勤日数、勤務地など、ライフスタイルに合わせて選択)
(株)イズミ 60歳 再雇用制度 嘱託、エルダー
(パートタイマー)
再雇用制度 専門知識、調整力”人”対”人” 健康・モチベーション維持
(株)平和堂 60歳 契約社員制度
(シニア社員)
再雇用制度 商品についてなどの幅広い知識、専門技術など
イズミヤ(株) 60歳 関連会社に入社後、業務請負派遣 嘱託社員 再雇用制度 専門知識を活かした接客技術・幅広い商品知識を活かした営業業務 勤務内容と勤務時間
(株)ヨークベリー
60歳 導入予定 嘱託社員 再雇用制度 職務による
(株)いなげや
60歳 エルダー制度 嘱託 再雇用制度 専門知識・加工技術・商品知識 健康状態・仕事への意欲
(株)カスミ 60歳 嘱託社員
(呼称:シニアスタッフ)
再雇用制度 店舗業務全般 保有する能力を発揮できる職場配置
(株)東急ストア 60歳 嘱託社員 再雇用制度 販売にかかわる知識及び加工技術などについて、社員・パート社員への指導力 本人のスキル・健康状態を考慮しての配置
月刊「食品商業」3月号より一部抜粋

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