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「小商圏 高齢社会」こそスーパーマーケットの出番だ
シニア満足度向上が「何回も来たくなる店」への道
ひたひたと迫る「高齢社会」。その中で、スーパーマーケットが果たす「内食提供」という役割はどのように変わっていくのか。「シニア大満足」を実現する店が増えることは、すなわち高齢社会が豊かなものになるということ。スーパーマーケットの現状を整理してみよう。
文/写真・山本恭広(株)商業界/『食品商業』 編集長

  10軒中3軒が(世帯主が65歳以上の)高齢世帯。
 これは厚生労働省の研究機関である国立社会保障・人口問題研究所が発表した2005年の高齢世帯総数の割合(27.3%)です。2000年の23.8%から3.5ポイントの伸びです。ちなみにトップは秋田県の36.1%。同研究所によると、2010年には全国平均では30%を突破、2020年には、引き続き秋田県(44.2%)を筆頭に、山口県(43.8%)、和歌山県(42.7%)と17県で、高齢世帯の比率が40%を超えるといわれています。
 商業統計(平成17年発表)によると小売業の「事業所数」、すなわち店舗の数は123万8296店(前回比マイナス4.8%)、「年間商品販売額」は133兆2851億円(同マイナス1.4%)と、ともに前回調査(平成14年版)に引き続き減少しました。2006年をピークに始まるとされる人口減少とあいまって、高齢化社会では、商業も市場もパイ全体がシュリンクに向かっているのは間違いありません。
 しかし、「食卓」が存在する限り、「内食提供業」であるスーパーマーケット(SM)の果たすべき役目はあります。高齢社会にふさわしい対応があるはずです

「年金支給日」対応も食品スーパーのシニアMD

 全国レベルで進む高齢化の傾向も地方都市にいくほど著しい。
 地方に拠点を置く食品スーパーの”ドミナントの高齢化“への対応をみてみると、先に述べた秋田、青森に拠点を置くチェーン伊徳(23店舗)が積極的に取り組んでいます。秋田で36.1%の高齢世帯比率も、市町レベルに落とし込むと4割近くまで上昇する地域もあるのです。伊徳では、1.和食・和風メニュー 2.“ぜいたく”商材 3.安心・安全・健康 4.(孫への)プレゼント関連商材、の4つの切り口を持った提案を行っています。3.でいえば、青果売場では、プレミアムバナナや目によいとされるブルーベリーの品揃えを強めること、4.は孫世代に人気のキャラクター関連商品の販売強化などです。特に年金支給日がある偶数月、4月の入園・入学時、12月のクリスマスシーズン時には、売場でのPOP訴求を強めています。支給日に当たる15日の週には、栄養ドリンクや和菓子メニューなどをプロモーション対象にすることで、高齢者の懐事情を考慮した売場づくりを行っています。15日の売上げは、高い店では平日比で130%、平均でも110%の売上げを弾いています。
 都市部においては、大阪のニッショー(26店舗)が、1.少量パックの充実 2.高齢者し好への対応 3.半調理品、メニュー提案の強化、デリバリー導入 4.健康サポート 5.店内サービスの強化、などを挙げて取り組んでいます。鮮魚の2、3カン盛りの小容量に抑えたおつくりパックや100g未満の和牛パックの品揃えを拡充するなどです。
 少量パック、半調理品などの充実は高齢者対策に限らず、単身世帯や個食化の傾向の中で多くの食品スーパーにおけるマーチャンダイジングの必須対応として位置付けられるものですが、食材のムダを軽減するという高齢者世代のし好にもマッチしているようです。
 先日、ある店の取材時、その店ではチラシ販促の初日ということを考慮してか、店頭入り口に売場の手描きポスターを掲示、店内各所のチラシ掲載商品陳列場所をスポッターで明記、買い物客が目当ての商品を容易に見つけることができるような仕掛けがされていました。これも買い物負担を減らそうという店長のアイデアでしょう。
 その他、分かりやすいカテゴリー別表示、味噌と味噌汁用のだし、パスタとパスタソース、お茶と和菓子といった関連付けた陳列、(下を見て歩くことが多いことを踏まえた)明確な床面表示といった高齢者はもちろんのこと、身体に障害を持った買い物客を、ストレスなく受け入れる“売場のバリアフリー化”も考慮する時に来ているのではないでしょうか

シニア客が買い物ストレスを感じない売場設計と商品構成が求められる。

シニア客には、メニューだけでなく、容量、価格、そして見せ方も考えた売場構成が求められる。

“食べやすい”だけでなく“ムダがない”小容量パックの商品化はシニアに受け入れられる。

「開けにくい」「開封しづらい」商品の改善がテーマ

 高齢者、障害者を含むすべての人が使いやすい商品設計、仕様を指す「ユニバーサルデザイン」の普及を進めている任意団体「ユニバーサルデザインフォーラム」の調査によると、「食品・飲料の使いにくさ」について、70歳以上の回答者の20%が「よくある」と答えています。また、80%の回答者が包装の開け口、容量などを「使いにくい点」として挙げています。
 「不満を感じる」とされている品種と中身をみてみると、「瓶詰め惣菜」(ふたが開けづらい)、「レトルト食品」(レトルトパウチが開封しづらい)、「畜肉加工品」(真空パックが開けづらい)、といった本来、利便性を高めるために開発された商品ながらも、開封に大きな負担と不満が寄せられて結果が出ています。
 その他、牛乳、豆腐、調味料、チルドデザートにおいても、「開けづらい」という不満が集中しています。食品は、細菌や異物混入を防ぐための気密性など安全性は十二分に確保されなければなりませんが、メニューや容量だけでなく、食べるまでの取り扱いやすさという点においても、高齢者対応は、店や売場だけでなく、商品設計段階にまで踏み込む余地があるようです。
 もちろん、これらの対応は企業戦略のすべてを表すものではなく、例えば、多くの食品スーパーチェーンでは依然として素材提供の量販型売場づくりが売上げの根幹には違いありません。高齢者マーケットへアクセルを踏むにはまだ慎重な企業が多いのも事実です。

大型店は「郊外バトル」、小型店は「市街地バトル」

 先の商業統計で「業態別」でみると「食料品スーパー」は「事業所数」1万8493店(前回比4.5%増)、「年間商品販売額」は17兆688億円(同7.3% 増)とともに伸長しました。1店当たり人口にすると6500人、2000世帯強。このマーケットは食品スーパーの基礎売上げを支える足元商圏にほぼ匹敵します。まさに商圏の狭小化が始まっているのです。売場面積も1639万平方メートルから1827万平方メートルへと11%の増加を見せており、1店当たり売場面積に換算すると920平方メートルから990平方メートルへと拡大したことになります。大型化を伴った出店の舞台が、都市部郊外に起きているといえます。
 ローカル都市においても、後継経営者難もありますが、商店街の老朽化・空洞化が進んでいます。先に福島県議会で可決され、郊外大型店の出店を事実上“規制”したものとされる「まちづくり条例」も、商店街に代表される中心市街地の空洞化、高齢者の買い物環境の劣化への危機感が背景にあります。
 特に、物件の制約もあって、今後の新規出店が厳しい都心部では、半径300m圏内、徒歩10分圏内に食品スーパーがないという「過疎地域」があるといわれています。
 2005年春、ローソン「STORE100」など一時流行の感があった生鮮強化型コンビニや「SHOP99」の急速出店も都市部の既存小型物件を活用しつつ、「食品スーパー過疎地域」へ打って出たといえるでしょう。
 あるミニスーパーでの話です。老朽化した店舗の増床改装するに先立って、商圏の調査を行ったところ、足元商圏内に数えられる2300世帯のうち、75%に当たる1800世帯が(高齢者を多く含む)単身者あるいは2人世帯だったそうです。その店では、改装プランの売場コンセプトを「個食のおかず」へと切り替えたそうです。
 本頁の読者の方も一度、商圏の再調査をしてみるとよいかもしれません。
 「小商圏 高齢社会」は小型店舗の持つ機動性を際立たせる機会ともいえるのです。

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 “安く たらふく”から“おいしいものを、いろいろ少しずつ”へと消費が変わりつつあります。安心・安全、そして健康を、堅実に、リーズナブルに提供する。「小商圏 高齢社会」へのマーケット対応には店舗規模の大小による優劣はありません。「シニア大満足」に向けた戦いの舞台には、等しく食品スーパーの出番があるのです。
※掲載の写真は本文とは関係ありません。


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