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11月1日、商取引の新ガイドライン「大規模小売業告示」スタート
「真っ当商売」に徹しよう

11月1日、商取引に関する新しいガイドラインが実施されます。
「返品」「価格交渉」「販売応援」に関しての禁止行為が明確化され、対象事業者も拡大されました。
何がどう変わったのか。食品スーパーなどのバイヤーや店舗の仕入れ担当者が注意すべき点は何でしょう。

文/写真・山本恭広(株)商業界/『食品商業』 編集長

  「青果の仕入れに際し、セール用だからといって、本来の仕入れ価格を下回る価格での納入を指示する」
 「納入業者に対し、新店や改装店のオープンに際し、自店の商品の陳列や補充作業用に社員を派遣させていた」
 これらはいずれも最近1年間、「大規模小売業者による優越的地位の濫用」に当たるとして、公正取引委員会から小売業者に対して勧告がなされた行為内容です。
 あるディスカウンター企業では、「新店オープンの協賛金として、使途や算出根拠を明らかにしないまま、納入金額の一定額を提供させていた」ことが、「協賛金等の負担の要請」に当たるとして、やはり勧告がなされています。

「百貨店業告示」から「大規模小売業告示」へ半世紀ぶりの改定

 11月1日、「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」の告示(「大規模小売業告示」)が施行されます。
 独占禁止法で禁じられている「優越的地位の濫用」は、公正取引委員会が指定する告示によって、その内容が定められており、全ての業種を網羅する「一般指定」と、業種ごとにより具体的に定める「特殊指定」の2つに分けられます。小売りの場合、1954年に出された特殊指定の「百貨店業における特定の不公正な取引方法」の告示(「百貨店業告示」)があり、ガイドラインとなってきたのです。それが今回の「大規模小売業告示」として改定されたわけです。
セール終了後に売れ残った商品の返品も改めて禁止行為であることに注意。

 「百貨店業告示」と「大規模小売業告示」。半世紀の時間をかけて変更された告示のポイントはどこにあるのでしょうか。
 今回の「大規模小売業告示」では、「規制対象事業者」と「禁止行為の内容」に変更が加えられました。
 まず、「規制対象事業者」では、規制対象事業者をより明確に示しました。従来の「百貨店業告示」は、当時、小売りの代表勢力であった百貨店を想定してつくられたもので、規制対象の定義も「一定の売場面積を有する同一の店舗で、一般消費者により日常使用される多種類の商品の小売業を営む事業者が対象」となっており、百貨店をはじめ食品スーパーなどが対象となってきました。
 それから半世紀、その間、72年には、百貨店の三越をダイエーが抜き小売業トップに、その後、セブン‐イレブンが全店売上高で、国内小売業ナンバーワンになるといったように、主役業態の入れ替わりが激しく起きました。また、家電量販店、ホームセンター、ドラッグストアといった、特定の分野の商品に強い新業態も登場するなどバイイングパワーを持った業態が多様化してきました。
 こうなると、「一定の売場面積」、あるいは「多種類の商品」を扱うという「百貨店業告示」ではとらえきれない業態も多くなり、新告示では、規制対象業者を「(1)前事業年度の売上高が100億円以上、または(2)一定の店舗面積の店舗を有するもの(東京都特別区及び政令指定都市においては3000m2以上、その他の市町村においては1500m2以上)」と改めたのです。これにより、コンビニチェーンはもちろん、先述の家電量販店やホームセンター、ドラッグストア、そして無店舗業態である通販会社も対象事業者に加えられたのです。従来からの百貨店や食品スーパーも条件を満たすものならば該当します。
 新告示の改定ポイントのもう一つの特徴である、「禁止行為の内容」については、禁止行為を7項目から10項目に増やしました。
 新たに加わった「押し付け販売等」とは、仕入れ担当者が納入業者に対し、中元商品や歳暮商品の購入を強要するような行為を指します。「不当な経済上の利益の収受等」とは、自社の決算対策のための協賛金提供や広告費用として、実際の費用以上の協賛金を出させるなど合理的な範囲を超えた金銭提供を求めることを指します。「公正取引委員会への報告に対する不利益な取扱い」とは、小売り側の不当な行為を公正取引委員会に知らせたり、知らせようとした業者に対し、支払い遅延や取引停止などの仕返しやいやがらせをする行為を指します。これらを今回の改定でははっきりと禁止行為に指定することで、公平な取引環境を確保しようとしたのです。
 また、改定では「納入業者」が新たに定義されました。従来、小売業者から“優越的地位”を濫用される立場にある業者としては、売上げ規模で明らかに小さいことが定義でありましたが、売上げ水準に格差がなくとも、小売業に対する取引依存度が高かったり、取引することの重要性が認められれば、“納入業者”となり、規模の大小に関わらず、小売業にとってはすべての取引先に「優越的地位」を濫用できる立場にあるというわけです。
 「規制を厳しくするだけでなく、各企業にとって何をやっていいのか悪いのか明確にさせることが重要だった」
 公正取引委員会経済取引局企業取引課では今回の新告示の背景について、このように言っています。
 昨年ごろから、流通関係の会合での説明会を行う機会が増えたという同課の担当者によれば、「禁止行為は業界外から見ればおかしなことばかり。結局、最初の取り決めを明確にすれば、かなりの部分は防げる。普段からの同意や合意が欠かせない」とのこと。

セーフティネットを整える小売り業各社

 新告示の施行を直前に控え、チェーン各社の対応はどうなっているのでしょうか。
 イオンでは、従来から取引先との条件を「事前に明確」にすることを最重視し、返品や値引き等についても、事前了解による覚書や合意書などがなければできない仕組みを整えるとともに「イオン行動規範」としても商取引の姿勢を同社HP上で掲げています。
 定期的な「取引先アンケート調査」により、契約が遵守されているかについてもチェックを行ったり、あらかじめシステム上に登録されていない返品を、「システムチェック」により防ぐようにしたものです。また、バイヤー教育など、社内で「コンプライアンスセミナー」を開き、周知啓蒙を進めています。
 イトーヨーカ堂も、社長を委員長に、各部門の責任者をメンバーとしたフェアトレード委員会による監視体制を設けるなど、原価、売価、入荷数など契約状況を随時、チェックできる機能を持たせています。
 「条件付き返品」が設けられることが多い衣料品の分野でも、同社では、事前取り決め以外のリベートの排除や、条件に基づいた返品であっても委員会が随時チェックするなど、不当返品の危険を排除する仕組みになっています。
消耗雑貨と同様に価格競争が激しいペット飲料。

「大規模小売業告示」では年商100億円以上の小売業はすべて規制対象業者となる。

 またあるSMでは、必ず文書に基づいた商談を徹底させることで、見積書や登録マスターなどでの事前の取り決めなしの返品や値引きが起こしにくい環境をつくっています。
 文書で契約内容を明確化し、仕組みやシステムによって、商取引の現場では不正が行われにくいセーフティネットをかけている点が対応を進めている各社の共通項といえます。
 ただし、「この告示でも、まだ抜け道がある」とあるチェーンの現役バイヤーは今回の告示の及ばない点を指摘します。
 現実に「優越的地位が濫用される」場面とは、取引条件の決まる商談の場でしょう。
 例えば、春秋の新商品導入における旧商品の処分の際、新商品の値引きとして織り込むことも、不当性を孕んでいるとはいえ、双方の“納得ずく”で行われる形になるというのです。
 また、ある食品メーカーの関係者は、「納入業者の従業員等の不当使用等」に当たる、新店オープン時や棚卸しなどへの応援要請について、「断れば“非協力的”と見なされ、以降の取引に影響が出る。取引の変更の過程も合法的なかたちをとるため、協力しないわけにはいかない」と言います。
 金銭などの提供についても、かつてのような利益補填目的のあからさまな協力要請は姿を消したものの、より巧みなかたちでの「不当な経済上の利益の収受等」も予測されるというのです。

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「損得より先に善悪を考えよ」

 これは「商売十訓」といって、商業界創始者である故・倉本長治前主幹が、商人のあるべき姿を十の誓詞としてまとめたもので、この言葉は第一に挙げられるものです。
 本来、商売とは利益追求をするもので、これが原則とされてきました。ただし、善悪を基準として商売を進めることが本当の繁盛につながるという考えをこの言葉は示しています。
 お客にとってよいと思うことを実行する。逆にお客にとって、不利益につながるのであれば、売れるものでも売らない、扱わないこと。いずれ、お客はそのことを店に感謝し、店のファンになってくれる。「お客」は「取引先」にも置き換えられるでしょう。
 今の言葉で言えば「コンプライアンス(法令遵守)」になるでしょうか。
 サービス残業、不当な労働環境が指摘される「人の問題」、不当表示、消防法対策などでも適法が求められる「店・売場の問題」と同様に、商売の根幹である「商取引の問題」についても、法を遵守し、真っ当に行うことが求められる時代になったのです。 
※掲載の写真は本文とは関係ありません。


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