兵庫県南部のほぼ中央に位置する神崎郡福崎町は、JR姫路駅から車で20分ほど北上したところにある。この町の緑に囲まれた小高い丘の上に、ATMなど金融機関向け機械装置や、省力機械、産業機械に使用する精密部品を製造する(株)新生金属がある。従業員数は20人ほど。決して企業規模こそ大きくないが、取り扱いアイテム数は3000点を超える。1個あたりの部品重量は、1g以下もあれば200〜300g程度とさまざま。こうした多品種変量加工に対応する同社は、特に関西地区では評判の加工会社だ。
500円硬貨特需で成長
厳しい品質要求の中で技術を磨く
創業は1973年。当初は家内工業的な色彩の強かった同社が躍進したのは1982年のこと。500円紙幣に替わる500円硬貨が初めて登場した年だ。「社内では“500円硬貨特需”と呼んでいますが、このとき、通貨処理機で知られるグローリー(株)(当時、グローリー工業(株)、本社:姫路市)さんからの受注が一気に増えました。それがきっかけとなって、設備を近代化し社員を増やすなど経営基盤を確立しました」と専務取締役の工藤秀和氏は語る。
主な加工品は大小さまざまなシャフトピン。これらの部品は通常は機械に隠れて目立たないため、一般の人には馴染みが薄いかもしれないが、コピー機やプリンターなどの紙を送り出す搬送用ローラーのシャフトをイメージすればわかりやすいだろう。
同社の精密部品加工は切削・研削などの機械加工が中心。切削とは刃物で金属や樹脂材料を削る加工法であり、研削とは砥石を高速回転させて材料を削る加工法である。具体的には、棒状の材料をNC(数値制御)旋盤や切削用のマシニングセンタと呼ばれる機械を使って精密部品に仕上げる。
同社が特に強みとするのは、長年培ったノウハウに基づく段取り替えの速さと正確さ。これにより、1品ものの試作品から1万個以上の量産加工まで、幅広い顧客ニーズに対応する。また、業務効率を上げるため、平日の昼間は特急品や試作品など手のかかる小ロット加工を行い、夜間や休日には自動運転できる機械を使い、比較的簡単な量産加工を行う「多品種変量加工体制」をとるなど生産方式にも工夫を凝らしている。
「グローリーさんというよき取引先に恵まれたおかげで、これまで景気の波に左右されることもなく、順調に業容を拡大することができました。金銭を扱う機械の性格上、部品に対する品質要求は厳しかったですが、それに応えることで技術を磨いてきました」(工藤専務)。
入出庫管理システム導入
年3〜4回の品物間違いを撲滅
しかし、課題もあった。取引先の要求レベルが納期、コスト、品質などすべての面で年々厳しくなり、同業他社との競合も激しさを増している。特に品質管理の強化が喫緊の課題だった。
「不良品の発生率を抑えることも重要ですが、もう一つ問題だったのは、納品時の品物間違いでした」と工藤専務。取引先に部品を納入する際、ラベル表示と中身が違っていたり、正規の部品の中に他の部品が混入するケースが1年に3〜4回の頻度で発生していた。また、不良品が発生した場合も、どのロットに問題があったのかの把握がなかなかできなかったという。
「ミスの発生は取引先からの信頼の失墜につながりかねない」。そう考えた同社は2007年9月、TERAOKAの入出庫管理システム『IT-Matex』を導入した。目的は加工製品のロット管理による品物間違いの撲滅と、トレーサビリティ(履歴管理)である。特にトレーサビリティが実現すれば、万一、納品後に不良品が見つかった場合でも、該当するロットをすぐ確認できるため、原因究明や影響範囲(納入先、時期)なども即座に把握できる。
新生金属のように、こうした考え方で入出庫管理システムを導入したケースは、全国の中堅部品加工会社の中では珍しい。
受注はインターネット経由。その受注情報をハンディターミナルに指示。現品のバーコード照合により出荷時のピッキングミスを防止する。また、作業者、作業日時、ロット番号などの情報をバーコードのスキャニングでコンピュータに記録。いつ、誰が、どの製品を、どこへ出荷したかをスピーディに追跡できるようにした。
「IT化や生産設備の近代化で先行しているとはいえない当社にとって、同業他社との差異化を図り、得意先からの信頼を得る最適な手段だと思いました」(工藤専務)。導入から半年間、品物間違いはゼロ、またトレーサビリティが必要になったことも一度も発生していないという。目下のところ管理対象は全アイテム中の約半数に相当するグローリー社向けの製品だけだが、今年中には全製品に拡大する。将来は生産管理との連動も視野に入れている。
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製品サンプル。シャフトピンのほか、バルブ部品など大小さまざまな精密部品がある |
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町を一望できる小高い丘の上にある新生金属の本社工場。1階は生産工場、2階には商品管理センターのほか会議室、休憩室などがある |
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| 「導入から半年間、品物間違いはゼロ。トレーサビリティの必要に迫られたことは一度もありません」と語る工藤秀和専務 |
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| (左から)『商品管理センターの清水さんと新井さん。IT-Matex II』の導入時には「発注データをそのまま取り込みたい」という要望を出したという |
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管理端末PC。入出庫の数量のほか、作業者や作業日時、ロット番号も瞬時にわかる |
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| 『IT-Matex II』のカウンティングスケール『DC -250M』。出荷担当者は画面に表示された出荷指示に従って部品を出荷する |
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出荷時は、『IT-Matex II』のハンディターミナルを使って、現品をバーコード照合により検品するため、ピッキングミスを防止できる |
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| 工場内にはNC旋盤やマシニングセンタなどの製造設備が所狭しと並ぶ |
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